桑木 恒, 竹内 正明, 芳谷 英俊, 春木 伸彦, 大谷 恭子, 呉 健嘉, 岩瀧 麻衣, 尾辻 豊

Hiroshi KUWAKI, Masaaki TAKEUCHI, Hidetoshi YOSHITANI, Nobuhiko HARUKI, Kyoko OTANI, Chien-chia WU, Mai IWATAKI, Yutaka OTSUJI

産業医科大学第2内科

Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health

キーワード :

【背景】
E/e’は左室充満圧を非侵襲的に推定する有用な心エコー指標であるが，必ずしも左室充満圧を反映しない病態が報告されている．一方最近E/e’x s’がE/e’よりも左室充満圧を正確に推定するとの報告があるが，その予後に対する有用性は検討されていない．
【目的】
E/e’とE/e’x s’の予後推定の有用性を比較検討すること．
【対象】
対象は当院で経胸壁3次元心エコー検査を施行し，予後調査が完結しえた519例（平均年齢: 65±17歳，男性: 309人）．心エコー記録時にパルスドップラー法，TDI法を用いて左室流入血流，僧帽弁中隔弁輪側のe’，s’を測定し，E/e’，E/e’x s’を各症例で算出した．全ての患者に予後調査を施行した．
【結果】
E/e’，E/e’xs’の値は正規分布を示さず，それぞれの中央値は15.6，2.82であった．両者の間には有意な相関を認めた（r2=0.63, p＜0.001）．平均776日のフォローアップ期間中に25人の心臓死を認めた．E/e’，E/e’x s’の値から4分位点を用いてグループ分けをした場合，両指標とも高分位グループほど予後が悪かったがLog-Rank法によるカイ二乗値はE/e’x s’の方が大きく，各群間での予後をより階層分けできていると考えられた．
【結論】
E/e’xs’は予後評価の有用な指標となり得ることが示唆された．