Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:左心機能Ⅱ

(S469)

高血圧症における心筋内小動脈血流異常検出の意義について

Impact of Detecting Abnormal Intramyocardial Small Coronary Artery Flow in Patietns with Hypertension

土井 泰治1, 鶴永 知万2, 上田 暢彦1, 森田 雅也1, 谷口 雄亮1, 川上 将司1, 柴田 浩遵1, 伊藤 賀敏1, 岡田 健一郎1, 林 亨1

Yasuji DOI1, Tomokazu TSURUNAGA2, Nobuhiko UEDA1, Masaya MORITA1, Yusuke TANIGUCHI1, Shoji KAWAKAMI1, Hiroyuki SHIBATA1, Noritoshi ITO1, Ken-ichiro OKADA1, Toru HAYASHI1

1大阪府済生会千里病院心臓血管センター循環器内科, 2市立柏原病院臨床検査科

1Senri Cardiovascular Center, Osaka Saiseikai Senri Hospital, 2Department of Clinical Laboratory, Kashiwara General Hospital

キーワード :

【目的】
マルチスライスCTなどのモダリティーにより表在冠動脈の非侵襲評価が容易となったが,心筋内に穿通する小動脈の評価に関しては十分ではない.近年の超音波診断装置の進歩により,表在冠動脈のみならず心筋内に穿通する小動脈血流の評価が十分可能となった.我々がPhilips社製HDI5000を用いてルーチンの経胸壁心エコー図検査を施行した連続1319例において行った検討でも,通常の心エコー描出困難例を含めパルスドプラ法による心筋内小動脈血流速波形の記録は1319例中1148例(87%)において可能であった.拡張不全は冠動脈疾患などに起因する収縮不全と同様に予後不良であり,その予期と予防は重要な課題である.拡張不全を生じる主な病態である高血圧心では心筋内小動脈の狭小化およびそれと関連した心筋線維化を認めることが報告されている.また,心筋内小動脈狭窄の存在が原因と考えられる心室性不整脈例や突然死例も報告されており,心筋内小動脈の異常を評価することは臨床的に重要である.ダールラット拡張不全心モデルなどの動物実験においては早期より心筋内小動脈壁肥厚と心筋内小動脈周囲や心筋間質の線維化を認めるが,アンジオテンシン受容体拮抗薬などの薬物治療により予後を改善し得ることから,臨床例においてもかかる異常を早期に検出し治療することが期待される.灌流心筋に対して血管サイズが不十分な場合は血流速が増大するため,心筋内小動脈局所に内腔狭小化が存在する場合,局所にacceleration flow (aliasing)を有する高速血流として描出される.これまでの検討では,健常例の平均(20±6cm/s)+2SD(32cm/s)以上の血流速を有する例を心筋内小動脈血流異常例とすると,かかる異常は高血圧症例において高率に検出され,特に左室肥大を有する例において高頻度であった.また,心筋内小動脈血流異常例では心筋内小動脈血流異常のない例に比し血中BNP濃度が上昇していた.しかし,心筋内小動脈血流異常例においても血中BNP濃度が上昇していない例も存在する.今回はかかる例においてその意義を検討した.
【方法および結果】
対象は,心精査のため,血中BNP濃度を測定し,心エコー図検査にて左室肥大や左室壁運動異常,有意な弁膜疾患を認めず左室収縮性が保持されており,心筋内小動脈血流を計測し得た高血圧症例のうち血中BNP濃度60pg/ml未満の92例である(血中BNP濃度21±14pg/ml).心筋内小動脈血流異常は92例中18例に認めた(血中BNP濃度20±13pg/ml)が,かかる例では経時的な血中BNP濃度の測定において血中BNP濃度は心筋内小動脈血流異常のない例に比しより高値を呈していた(血中BNP濃度361±385pg/ml vs. 112±122pg/ml, p<0.01).
【総括】
心筋内小動脈血流異常の存在は血中BNP濃度の上昇と関連しており,心不全を生じる病態との関連が示唆される.経胸壁心エコードプラ法による心筋内小動脈血流の評価はルーチン検査においても十分可能であり,かかる病態異常把握の一助となることが期待される.