Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:先天性心疾患Ⅰ

(S462)

左房還流型左上大静脈遺残を伴うunroofed coronary sinusの1例

A Case of Unroofed Coronary Sinus with Persistent Left Superior Vena Cava Draining to Left Atrium

坂東 美佳1, 山田 博胤1, 2, 西尾 進2, 平田 有紀奈2, 林 修司2, 發知 淳子1, 冨田 紀子1, 松浦 朋美1, 添木 武1, 佐田 政隆1, 2

Mika BANDO1, Hirotsugu YAMADA1, 2, Susumu NISHIO2, Yukina HIRATA2, Shuji HAYASHI2, Junko HOTCHI1, Noriko TOMITA1, Tomomi MATSUURA1, Takeshi SOEKI1, Masataka SATA1, 2

1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院超音波センター

1Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital

キーワード :

【はじめに】
左房還流型左上大静脈遺残(PLSVC)と診断されていたが,心房粗動を契機に右心不全を発症,精査の結果,unroofed coronary sinusが判明し,根治術を施行した1例を経験したので報告する.
【症例】
55歳,男性.42歳時,50歳時に脳膿瘍の手術歴がある.その際に心エコー検査で左房還流型PLSVCを指摘されていたが経過観察となっていた.今回,1週間前からの息切れ,前失神症状を主訴に当院を救急受診した.来院時心電図で2:1伝導の心房粗動であり,SpO2=88%(room air)と酸素化の悪化および胸部レントゲンでの心拡大から心不全が疑われ,当科入院となった.入院時の経胸壁心エコー検査で左室収縮能の軽度低下および右心系の拡大を認めた.心房粗動は電気的除細動で速やかに停止し,自覚症状は消失したが,SpO2=92%前後(room air)と低値のままであり,洞調律時の経胸壁心エコー検査で左室収縮能は正常範囲内に改善したが,右心系の拡大は変わらないことからシャント性疾患の存在が疑われた.造影CT検査にて既知のPLSVCに加えてunroofed coronary sinusが見つかり,経胸壁心エコー検査および経食道心エコー検査で左房後壁側に開口する異常管腔から冠静脈洞への交通が確認された.心臓カテーテル検査で明らかな左房-右房交通が証明され,上大静脈から右房には17%のO2 step upを認めた.また,Qp/Qs=1.9であり,収縮期肺動脈圧や左室拡張末期圧の上昇はなく,肺血管抵抗の増大を認めなかった.心房粗動に対しアブレーション術施行後,低酸素血症および右心負荷解除の目的で心房中隔欠損閉鎖術,PLSVC修復術(左房内routing),三尖弁形成術を施行した.
【考察】
Unroofed coronary sinusは非常に稀な先天異常であり,診断が困難であることが多い.本例では,心エコー検査にてPLSVCが診断されていたものの,unroofed coronary sinusの診断には至っていなかった.PLSVCが左房に開口していることが脳膿瘍やチアノーゼの原因となり,心房中隔欠損による慢性的な右心負荷,心房粗動により右心不全が顕性化したものと考えられた.