Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:左心機能Ⅰ

(S461)

慢性腎臓病患者における左室拡張能の評価

Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function in Patients with Chronic Kidney Disease

犬塚 斉1, 岩瀬 正嗣2, 杉本 邦彦1, 伊藤 さつき1, 加藤 美穂1, 中野 由紀子1, 杉山 博子1, 石井 潤一1, 山田 晶3, 尾崎 行男3

Hitoshi INUZUKA1, Masatsugu IWASE2, Kunihiko SUGIMOTO1, Satsuki ITOU1, Miho KATOU1, Yukiko NAKANO1, Hiroko SUGIYAMA1, Juniti ISHII1, Akira YAMADA3, Yukio OZAKI3

1藤田保健衛生大学病院臨床検査部, 2藤田保健衛生大学医療科学部, 3藤田保健衛生大学医学部循環器内科

1Department of Clinical Labolatory, Fujita Health University Hospital, 2School of Health Sieuceies, Fujita Health University, 3Department of Cardiology, Fujita Health University Internal Medicine

キーワード :

【背景】
慢性腎臓病患者(CKD)において心疾患の合併率は高いことが指摘されているが,左室拡張能との関連性を検討した報告は散見されるのみである.
【目的】
CKDにおいて左室拡張障害を有する患者の背景因子及び心事故発生率について検討することである.
【対象】
eGFRが60ml/min/1.73m2以下であるCKDのうちmodified Simpson法による左室駆出率(EF)が50%以上に保たれている症例263例(男性167例,女性96例)を対象とした.年齢は77.0±7.5歳である.
【方法】
左室流入波形および組織ドプラ法よりE/e’を算出し,E/e’が15以上の群(E/e’≧15, 52例)と15未満の群(E/e’<15,211例)の2群に分類し評価項目を検討した.評価項目はeGFR,高感度CRP(hsCRP),高感度トロポニンT(hsTnT),Hb,左室流入波形E波とA波の比(E/A),E波の減速時間(DcT),EF,左室心筋重量(LVMI)である.また,心不全,脳梗塞,心臓死,心筋梗塞を心血管事故と定義し,予後調査を行った.平均観察期間は25.8±8.7ヶ月であった.
【結果】
E/e’≧15とE/e’<15で有意差を認めた項目はeGFR[15.1(10.1-27.5)vs 22.0(15.1-35.4),p<0.05],hsTnT[25(18-40)vs 19(11-32),p<0.01],LVMI[119(106-147)vs 105(87-121),p<0.01],Hb[10.4(9.6-11.4)vs 11.0(9.7-12.5),p<0.03],E/A[0.79(0.67-1.09)vs 0.71(0.62-0.87),p<0.01]であった.hsCRP,DcT,EFは両群間で有意差は認められなかった.ステップワイズ多重ロジスティック解析では,E/e’≧15の独立した規定因子は,BNP[オッズ比:7.53(3.51-16.1),p<0.01]であった.経過観察中に心血管事故が37 / 263例(14%)発生した.Kaplan-Meier解析ではE/e’≧15で14 / 52例(27%),E/e’<15で23 / 211例(11%)と有意にE/e’≧15の群で高率であった.
【考察】
CKDにおいてE/e’が15以上の症例では,LVMI,E/Aが有意に高値であったことから左室肥大に伴い左室のコンプライアンスが低下していることが示唆された.また,hsTnTが高値であったことから,微小な心筋障害が関連している可能性が示唆された.さらにE/e’が15以上の群では,心血管事故の発生が高率であり経過観察に重要な役割を担う可能性が示唆された.