三宅 誠¹, 泉 知里¹, 高橋 秀一², 橋和田 須美代², 桑野 和代², 松谷 勇人², 中川 義久¹

Makoto MIYAKE¹, Chisato IZUMI¹, Shuichi TAKAHASHI², Sumiyo HASHIWADA², Kazuyo KUWANO², Hayato MATSUTANI², Yoshihisa NAKAGAWA¹

¹天理よろづ相談所病院循環器内科, ²天理よろづ相談所病院臨床病理部

¹Cardiology, Tenri Hospital, ²Clinicopathology, Tenri Hospital

キーワード :

【はじめに】
大動脈の血管肉腫は極めてまれな疾患である．今回，我々はその一例を経験し，経食道心エコー検査で観察し得たので報告する．
【症例報告】
81歳男性．突然に左下肢疼痛を自覚し，歩行困難となったため近医を受診．左足背動脈は触知不良であり，急性左下肢動脈塞栓症の疑いとして当院へ紹介．下肢動脈エコーおよび造影CTにて左大腿動脈の閉塞を確認したため，フォガティーカテーテルによる緊急塞栓除去術を施行．術後経過は良好で，術後6日で退院．塞栓子の病理検査において，悪性細胞を認め，血管肉腫が疑われると報告された．原発巣検索のためにおこなったFDG-PETで下行大動脈および鎖骨下・縦隔リンパ節に集積を認めた．経食道心エコー検査では，遠位弓部から下行大動脈にかけて，内腔にエコー輝度の低い腫瘤性病変を認めた（写真．矢印）．その形態は不整で，可動性を認めた．同部位の大動脈を切除し，病理検査に提出したところ，大動脈内膜肉腫の診断が確定．
【考察】
大動脈内に可動性を有する腫瘤としては，肉腫以外には，粥腫，血栓などが挙げられ，経食道エコーはその形態の評価に有用である．