Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:心・血管腫瘍

(S453)

右心室に弧発性転移を認めた肝細胞癌の1例

A case of isolated metastatic hepatocellular carcinoma in the right ventricle

杉浦 早希1, 櫻井 裕子1, 別所 由梨1, 増田 千秋1, 福田 はるみ1, 草川 聡子2, 土肥 薫3, 白木 克哉2, 伊藤 正明4, 登 勉3

Saki SUGIURA1, Yuko SAKURAI1, Yuri BESSYO1, Chiaki MASUDA1, Harumi KUHUTA1, Satoko KUSAGAWA2, Kaoru DOHI3, Yatsuya SHIRAKI2, Masaaki ITO4, Tutomu NOBORI3

1三重大学医学部附属病院中央検査部, 2三重大学消化器肝臓内科学, 3三重大学検査医学, 4三重大学循環器・腎臓内科学

1Central Clinical Laboratory, Mie University Hospital, 2Department of Gastroenterology, Mie University Graduate School of Medicine, 3Department of Molecular and Laboratory Medicine, Mie University Graduate School of Medicine, 4Department of Cardiology and Nephrology, Mie University Graduate School of Medicine

キーワード :

【症例】
75歳男性.糖尿病・アルコール性肝障害にて近医で加療されていた.2005年に肝胆道系酵素の上昇が認められたため当院に紹介され,多発性肝細胞癌(HCC)と診断された.2006年から2009年の間に肝動脈塞栓術,ラジオ波焼灼療法,肝部分切除が行われた.2010年4月に4度目のHCC再発が疑われ,精査目的に入院した.入院時の心電図検査でV1〜V4に新たな陰性T波を認めた.心臓超音波検査で,右室内に占領性病変が認められた.全長は3〜4cmで心尖部・中隔心筋から連続した,やや高輝度,可動性に富んだ構造物であった.以下に諸検査の結果を記載する.冠動脈造影:冠動脈に有意狭窄なし.中隔枝から右室内腫瘍への栄養血管あり.心臓MRI:右室心尖部に径44×58×25mmの腫瘍を認める.T1強調画像にて低信号,T2強調画像にて軽度高信号,造影T1強調画像では心筋と同程度に造影効果を認める.左室に局所壁運動異常なく左室収縮能は正常に保たれている.遅延造影にて腫瘍に造影効果は認めない.胸部CT:肺動脈に明らかな塞栓の所見は認めない.以上の結果から,右室内に孤発した悪性腫瘍と診断された.全身状態から摘出術は非常に高リスクであると考えられ,厳重経過観察となった.2010年8月,心臓超音波検査で,右心室内の腫瘍は,右室内腔を占領するほどに増大し,右室流出路の狭窄をきたしていた.2011年1月,右室流出路に伴う循環動態の悪化,肝不全の進行に伴う腹水貯留が急速に進行し,永眠された.病理解剖では,右室内にはやわらかい腫瘍が充満しており,内腔はほとんど満たされ,肺動脈本幹部付近まで進展していた.組織学的検討から転移性肝細胞癌と診断された.肝細胞癌は,門脈および肝静脈へ高頻度に浸潤が見られる.しかし,孤発性に心内転移が認められたという報告は極めて少ない.今回,右室内に弧発性の転移性肝細胞癌を認めた1例を経験したので報告した.