Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
循環器:不整脈

(S451)

洞不全症候群による徐脈の治療により左室径縮小を認めた四尖大動脈弁の一例

A case of quadricuspid aortic valve complicated with sick sinus syndrome showed reduction of left ventricular size by pacemaker implantation

上田 亨, 田中 伸明, 西村 滋彦, 中安 一夫, 内海 仁志, 金本 将司, 中尾 文昭, 藤井 崇史

Tooru UEDA, Nobuaki TANAKA, Shigehiko NISHIMURA, Kazuo NAKAYASU, Hitoshi UCHINOUMI, Masashi KANEMOTO, Fumiaki NAKAO, Takashi FUJII

山口県立総合医療センター循環器内科

Department of Cardiology, Yamaguchi Grand Medical Center

キーワード :

【症例】
症例は70歳代男性.四尖弁大動脈弁に伴う大動脈弁閉鎖不全(AR)として1995年より当科外来にて定期フォローを受けていた.その当時ARは半定量評価で中等度以上であったが自覚症状はなく経過観察されていた.2008年3月には,心胸郭比(CTR)は55%で,労作時呼吸困難の訴えがあった.9月の心エコー検査では左室拡張末期径(LVDd) 62 mm,左室収縮末期径(LVDs) 35 mm,左室駆出率(LVEF) 73%で以前の検査値と明らかな変化を認めなかったが,症状の進行からこの時点で大動脈弁置換術(AVR)の適応を検討された.この頃,徐脈傾向が明らかになり(血圧128/47mmHg (心拍数(HR) 40/分),ホルター心電図では最大4.6秒の洞停止がとらえられ,洞機能不全症候群の診断に対し,まずDDDペースメーカ移植術を受けることとなった.ペースメーカ植え込み前日の心エコー検査ではLVDd 63mm,LVDs 40mm,LVEF 63% (HR 45/分)はこれまでと著変なく,ARの評価も変化なかった.ペースメーカ植え込み7日後の心エコー検査(HRは心房ペーシングで70/分)では,LVDd 56mm,LVDs 40mm,LVEF 54%と左室径の縮小を認め,植え込み後9か月後の検査ではLVDd 56mm,LVDs 36mm,LVEF 68%であり,LVDdの縮小は維持されていた.カラードプラでのARの半定量評価はペースメーカ植え込み前と比べ変化はなかった.ペースメーカ移植後には,労作時呼吸困難は消失し,AVRは一旦延期してほしいという患者の希望があり,引き続き当科外来でフォロー中である.
【考察】
ARでは拡張期に逆流が認められるが,徐脈になると,拡張期が長くなり,左室拡張容積増大と拡張末期圧上昇が生じることが知られており,過去の報告では心房ペーシングによる心拍数増加によって,左室拡張末期容積の減少,左室拡張末期圧の低下,心拍出量の増加が認められている1).今回の症例でもペースメーカ植え込み後に心拍数の増加とともに左室拡張末期径の減少が認められ,自覚症状も軽減したことから大動脈弁置換術は一旦延期された.AR症例における徐脈は血行動態的に好ましくないことは参考文献1)等により既知の事象であるが,今回左室拡張末期径の明らかな変化から,この事象を確認できた症例を経験したので報告する.
【参考文献】
1)Judge TP et al Quantitative hemodynamic effects of heart rate in aortic regurgitation. Circulation 44: 355-367, 1971.