Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:その他Ⅲ

(S441)

転移リンパ節モデルへの微小気泡と超音波をもちいたドラッグデリバリーに関する研究

Drug delivery to mouse model of metastatic lymphnode with low-intensity ultrasound and micro/nanobubbles

佐藤 琢磨

Takuma SATO

東北大学医学部泌尿器科

Department of Urology, Graduate School of Medicine, Tohoku University

キーワード :

【目的】
リンパ節転移はがん患者の予後に大きな影響を与える因子である.現在,リンパ節転移に対しては抗癌剤の全身投与が一般的に行われているが,その奏効率は決して高くなく,抗がん剤の効果を高める工夫が必要とされている.本研究ではリンパ節腫脹マウス(MXH-10/Mo-lpr/lpr (MXH10/lpr))をもちいて転移リンパ節モデルを作製し,微小気泡と低出力超音波がシスプラチンの抗腫瘍効果を増強するか調べることを目的とする.
【方法】
抗癌剤としてシスプラチン,微小気泡として音響性リポソーム(AL: acoustic liposome)[1]を使用した.マウスはMXH10/lprマウスをもちいた.このマウスはMRL/MpJ-lpr/lpr(MRL/lpr) とC3H/HeJ-lpr/lpr(C3H/lpr) をかけあわせて作製した組換え近交系マウスであり,Fasの欠損変異を呈するlpr遺伝子をホモ接合でもつことにより自己反応性リンパ球が増殖する.生後3か月ごろよりヒトと同様の長径10mm程度までのリンパ節の腫脹をきたす.このMXH10/lprマウスの腸骨下リンパ節にルシフェラーゼ遺伝子を恒常的に発現するマウス乳がん細胞(FM3A/pLuc)を接種し,転移リンパ節モデルを作製したのち,1)コントロール,2)シスプラチン+AL,3)超音波+AL,4)シスプラチン+超音波+ALの4群にわけ実験をおこなった.シスプラチンの一回投与量は0.75mg/kgとし,超音波照射条件は共振周波数1MHz,超音波強度3.0W/cm2,パルス200,デューティー比20%,120秒間照射とした.超音波トランスデューサーはφ30mmをもちいた[2].治療は腫瘍細胞接種をday0としday2, 3, 6におこなった.治療効果を生体発光イメージング装置(IVIS)を用いてday2, 4, 7, 9に測定した.腸骨下リンパ節の血管密度はソナゾイドを尾静脈より投与し小動物用マイクロ超音波イメージング装置(VEVO 770)で腫瘍細胞接種前日およびday5, 8に測定した.ヘマトキシリン=エオジン染色およびCD31による免疫染色でday9で摘出されたリンパ節の病理組織像を調べた.またin vitroでもin vivoと同様の4群で実験をおこなった.1ウェルあたり1.0×105cells/ml(48 well)に調整した細胞懸濁液500mlを加えたのちに治療をおこなった.超音波照射条件は共振周波数を1MHzとし超音波強度は0.1, 0.5, 1.0W/cm2,超音波照射時間を10秒間とした.P<0.05を統計的に有意と判断した.
【結果および考察】
In vitro実験ではシスプラチン濃度0.5μM,超音波強度0.1および1.0W/cm2で超音波群がシスプラチンの抗腫瘍効果を増強することが示された.一方でシスプラチン濃度が低い群(0.1μM)および高い群(5.0μM)では超音波+ALによる抗腫瘍効果の増強は認められなかった.In vivo実験では全実験期間を通じてシスプラチン+超音波群が他の群と比較しルシフェラーゼ活性が低下する傾向が示された.特にday7およびday9ではシスプラチン+超音波群がコントロール群と比較して統計的に有意にルシフェラーゼ活性が低下していた(P<0.05).以上よりIn vitroおよびin vivoの両条件下において超音波およびALはシスプラチンの抗腫瘍効果を増強させる可能性が示された.
【参考文献】
【1】Kodama T, et al. J Electron Microsc (Tokyo) 2009; 59: 18796.
【2】Watanebe Y, et al. Cancer Sci 2008; 99: 2525-31