Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:超音波ガイド下治療に向けてⅡ

(S439)

強力集束超音波治療における多点キャビテーション気泡を利用した加熱凝固領域の増大

Tissue coagulation enlarged by cavitation enhanced heating in multiple focal spots in high intensity focused ultrasound treatment

佐々木 博史1, 中村 高太郎1, 吉澤 晋1, 梅村 晋一郎2

Hiroshi SASAKI1, Kotaro NAKAMURA1, Shin YOSHIZAWA1, Shin-ichiro UMEMURA2

1東北大学大学院工学研究科, 2東北大学大学院医工学研究科

1Graduate school of engineering, Tohoku university, 2Graduate school of bioengineering, Tohoku university

キーワード :

【目的】
強力集束超音波を用いたがん治療法は,低侵襲な方法であるが,長い治療時間が問題の1つとなっている.そのため,高効率で短時間の治療法の確立が必要とされている.そこで注目されるのがキャビテーション気泡の加熱増強効果を利用する方法である.そこで本研究では,隣接する複数箇所にキャビテーション気泡を生成して,広範囲の加熱増強効果を利用することで大きな凝固領域を得る超音波照射方法を開発した.
【方法】
本研究では,複数の超音波照射法を用いて焼灼実験を行い,加熱凝固領域の比較を行った.照射対象には脱気処理した鶏ささみを選択し,超音波の入射方向に対して鶏ささみの繊維方向が垂直になる場合と平行になる場合について実験を行った.超音波の照射は,1辺6mmの正方形の四隅の4点に対し,アレイトランスデューサを用いた電子走査による高速スキャンにより行った.1つ目の超音波照射法が,Triggered HIFUと呼ばれる照射法である.これは,最初に各点に対してTrigger Plusesという高強度超音波を短時間照射し,キャビテーション気泡を発生させる.その後Heating Wavesという低強度超音波を長時間照射することでキャビテーション気泡を振動させ加熱増強効果を得るという照射法となっている.2つ目が,Repeatedly Triggered HIFUと我々が呼んでいる照射法である.これは,各点に対してTrigger Plusesと Heating Wavesの照射を繰り返すことでキャビテーション気泡の発生・振動を繰り返す照射法である.3つ目が,各点に対してHeating Wavesのみを照射する照射法である.Trigger Plusesの強度は30 [kW/cm2]または50 [kW/cm2]とし,Heating Wavesの強度は0.8 [kW/cm2]とした.
【結果・考察】
Fig.1に鶏ささみの焼灼体積結果(10回の平均値)を示した.この結果から,加熱増強効果はTrigger Pluses強度および照射シーケンスに依存しており,キャビテーション気泡が適切に発生して利用されている場合,加熱増強効果が有用であるということが確認できた.また,同じ照射法でも図(a)と図(b)で結果が異なるのは,繊維方向により超音波の減衰が異なるため,キャビテーション気泡の発生に十分な超音波強度が得られていない場合があるためであると考えられる.そのため,臨床においては照射対象に応じてキャビテーション気泡の発生・成長をモニタリングし,適切な強度・シーケンスを選択する必要があることがわかった.