Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:超音波ガイド下治療に向けてⅡ

(S439)

集束超音波の音響エネルギーベクトル場の数値シミュレーションとその動力応用への考察

Numerical simulation for vector field of acoustic energy of focused ultrasound and its discussion of power application

望月 剛, 保坂 直斗, 江田 廉, 小野木 真哉, 桝田 晃司

Takashi MOCHIZUKI, Naoto HOSAKA, Ren KOUDA, Shinya ONOGI, Kohji MASUDA

東京農工大学大学院生物システム応用科学府

Graduate School of Bio-Application & Systems Engineering, Tokyo University of Agriculture and Technology

キーワード :

【目的】
医用超音波応用はBモード画像表示に代表されるように映像系を中心に発達を遂げてきている.この場合超音波エコーの振幅情報が主な画像の情報源となることから,超音波が作る音圧分布が重要であり,その音圧分布を求める多くの研究がなされて来た.しかし,近年超音波のエネルギーを動力源として応用する研究が進められている.例えば超音波放射圧を利用しバブルの制御を行う研究などが一例であるが,この場合には,音圧分布のみでは不十分であり,超音波エネルギーの分布を議論する必要がある.そこでこの発表では音響エネルギーベクトル場を計算機シミュレーションにより求め,その結果を実験結果と比較して議論する.
【方法】
音響エネルギーは音圧と粒子速度との積で求めることができる.そこで今回は振動子が作る複素速度ポテンシャル場を計算し,その速度ポテンシャルの時間微分より音圧を,空間微分より粒子速度を求め,その積の時間平均より音響エネルギーベクトル場を,コンピュータを用いて計算した.速度ポテンシャルはスカラ量であるが,粒子速度はベクトル量であるため,それらから得られる音響エネルギー量もベクトル量となる.
【結果】
凹面振動子からZ軸上に超音波を照射すると,凹面振動子が形成する超音波ビーム上では焦点付近で音響エネルギーが集中し,かつそこでの音響エネルギーベクトルの多くは音波進行方向を向くベクトルとなるが,そのビームの中心から少し離れるとビームの外側に向かうベクトルが見られた.これは媒質中を伝搬する超音波ビームが伝播媒質を前方に押す超音波放射力と合わせてビーム軸から外に向かって押しのける力が発生することを意味している.バブルが流れるY字分岐路で片方の分岐に超音波ビームを近づけるとバブルは超音波ビームからの外向きのエネルギーにより,あたかも超音波ビームを避けるように反対側の分岐に多く流れるようになる現象が観測された.
【結論】
音響エネルギーベクトル場を数値シミュレーションより求めた.その結果超音波ビームから外に向かうベクトルが観察され,超音波エネルギーを動力源として利用する場合には超音波エネルギーの流れの方向も考慮することが有用であることが示唆された.