Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:音場およびファントム

(S432)

画像差分シュリーレン装置の改良と集束超音波パルス音場の可視化

Improvement of image subtraction Schlieren system and visualization of focused pulsed ultrasound field

関根 大輝1, 工藤 信樹1, 溝尻 旬2, 清水 孝一1

Daiki SEKINE1, Nobuki KUDO1, Shun MIZOJIRI2, Koichi SHIMIZU1

1北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻, 2溝尻光学工業所本社

1Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, 2Head Office, Mizojiri Optical Co., Ltd.

キーワード :

【はじめに】
医療用超音波機器は臨床の場で広く用いられているが,機器の劣化や故障による超音波出力の変化を病院において評価することは難しい.そこで我々は,超音波音場を簡便に可視化できる画像差分シュリーレン法を提案し,その実用性を評価してきた.本手法はシュリーレン法の特長である感度の高さとシャドウグラフの特長である光学系の簡便さを同時に実現できる.本報告では,従来装置の構成を見直して再設計した改良装置について述べ,これを用いて集束型超音波音場を可視化した結果について述べる.
【改良装置】
新たに開発した画像差分シュリーレン装置の概要を図(a)に示す.光源には近赤外レーザダイオードを用い,パルス幅 5 ns,瞬時パワー 1 Wの光パルスを発生させた.また,撮影条件による観察倍率の変化を避けるため,光源にはコリメートレンズを新たに加えた.撮影装置には,輝度分解能が高い冷却型CCDカメラ(A/D変換精度 16 bit)を用いた.光源とカメラは,光軸が常に一致するようにベースに固定し,ベースをステージで上下させることにより広範囲における超音波伝搬の撮影が簡単に行えるよう工夫した.また,計測手順はソフトウェアにより自動化し,短時間での音場撮影を実現した.
【集束音場の可視化】
超音波診断装置が発生する超音波パルスを想定し,中心周波数5 MHzの集束型振動子(パナメトリクス V307,焦点距離50 mm)の超音波音場を可視化した.水槽内に設置した針先からの反射波超音波を計測することにより集束超音波の焦点位置を正確に求め,その状態でカメラの焦点を針先に一致させることにより超音波とカメラの原点を一致させた.その後,シャドウグラフの仮想スクリーン位置であるカメラの焦点位置を原点からカメラ側に30mm移動し,撮影を行った.
【結果および検討】
ディレイ時間を変化させて6枚のパルス音場像を撮影し,重ね合わせて表示した結果を図(b)に示す.超音波の伝搬に伴いパルス波が集束・発散する様子が捉えられている.また図(c)には焦点合わせに用いた針の先端で反射する超音波を撮影した結果を示す.微弱な反射波が拡散していく様子が可視化されている.光学的な手法で可視化される音場は原理的に歪みを含み,音圧分布を正確に評価することは難しいが,医用超音波機器の品質管理において有用と考えられる.本研究の一部は科研費補助金により行われた.