Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:心臓と血管

(S428)

Vector Flow Mapping精度検証用心臓左室ファントム実験系の構築

Left Ventricle Phantom for Validation of Vector Flow Mapping

浅見 玲衣1, 田中 智彦1, 岡田 孝2, 川畑 健一1, 橋場 邦夫1

Rei ASAMI1, Tomohiko TANAKA1, Takashi OKADA2, Kenichi KAWABATA1, Kunio HASHIBA1

1株式会社日立製作所中央研究所メディカルシステム研究部, 2日立アロカメディカル株式会社第1メディカルシステム技術本部

1Medical Systems Research Department, Central Research Laboratory, Hitachi, Ltd., 2Medical Systems Engineering Division 1, Hitachi Aloka Medical, Ltd.

キーワード :

【背景】
循環器分野における心機能計測の一環として,心臓内の血流動態を調べることは有用であると考えられる.Vector Flow Mapping(VFM)は,超音波カラードプラの情報から,物理法則を用いて血流を2次元的に推測し,詳細な血流動態,例えば流れの方向や渦の情報などを提供する新規手法である.
【目的】
我々は,VFMによって計算される血流ベクトルの正確性を評価するため,光学的・音響的に左室内血流を同時観測することが可能な実験系を構築した.本実験系は,流れの計測手法として確立されたPIV(Particle Image Velocimetry)手法を用いて直接的に左室内流れを計測し,同時にVFM計測を行い,双方の比較を可能とする.本発表では心臓左室ファントム実験系の詳細ついて報告する.
【方法】
左室内の流れを模擬するために,心臓と同様の内壁形状,及びヤング率を持ち,光学的にも音響的にも内部の流れが観察可能ファントムを作成した.ヒト左室のCADデータ(日本SGI株式会社)をもとに,透明な造形用ウレタン樹脂素材を用いて成形した.素材の屈折率は約1.47であった.僧帽弁,大動脈弁には臨床で用いられているものと同等の機械弁を用いた.左室を拍動させるため圧変動を加えることができるチャンバを制作した.圧チャンバ下部から音響撮像を,側面から光学撮像を行った.圧チャンバ中はグリセリン30% 溶液,もしくはポリエチレングリコール400(PEG)で満たした.
【結果と考察】
図1に作成した左室ファントムのPIV撮像図を示す.屈折率が約1.39のグリセリン溶液中では光の屈折により撮像図(a)に歪みが生じているのに対し,屈折率1.47のPEG中(b)では歪みがほぼ見られない.溶媒とファントムの屈折率を一致させることで,圧チャンバ内の透明性を担保し,3次元構造を持つ左室ファントム内の粒子の流れを光学的に観察することが可能になった.静的加圧方式で実測したファントムのヤング率は約57 kPa (@ 1 %歪)であり,生体組織とほぼ同等である.圧変動によるファントム駆動時,ドプラで観察した流れがヒト左室と定性的に一致することを確認した.本実験系によれば,心臓に限らず,生体の軟組織の動きをPIVと音響計測を同時に行うことができ,血流動態を評価するin vitro系として様々な応用ができる.