Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

一般口演
基礎:その他Ⅰ

(S423)

水を発熱体とするカロリメトリ法による超音波パワー計測技術の開発

Ultrasonic power measurement by calorimetric method by using water as heating material

菊池 恒男1, 内田 武吉2

Tsuneo KIKUCHI1, Takeyoshi UCHIDA2

1独立行政法人産業技術総合研究所計測標準研究部門音響振動科, 2独立行政法人産業技術総合研究所計測標準研究部門音響振動科音響超音波標準研究室

1National Metrology Institute of Japan, AIST, 2National Metrology Institute of Japan, AIST

キーワード :

【目的】
NMIJでは,1 mW〜15 Wまでの超音波パワー一次標準を「天秤法(Radiation Force Balance, RFB)」によって整備し,2006年から依頼試験による標準供給を開始している.一方,近年,医用超音波機器は高出力化の傾向にあり,機器の安全性や効果等の評価の観点から,高出力超音波パワーの高精度測定が不可欠である.そのため,15 W以上の超音波パワー計量標準の整備が喫緊の課題であるが,従来の天秤法は,15 Wないし20 W程度の超音波パワー測定に使用できないため,代替法の開発が不可欠である.NMIJでは,水中に超音波を照射し,超音波吸収による水温上昇測定値から超音波パワーを算出する“カロリメトリ法”を,100 W以上の高出力超音波パワーの計量標準とするための研究を進めている.これまでに,カロリメトリ測定の条件を満たす測定用水槽を設計・試作するとともに,viscous heatingや音響流の影響を除去する測定技術を開発した.更に標準供給における仲介器となる「標準超音波振動子」についても指針を得た.
【方法】
水槽壁が中空の直径150 mm,深さ90 mmの円形水槽を試作した.水は蒸留水を用い,溶存酸素濃度が2 ppm以下となるまで脱気した.超音波振動子は,有効径20 mm,周波数1 MHzで,内部損失に伴う発熱の小さいC213型PZTを用いた.振動子から放射された超音波は,壁面で全反射を繰り返しながら音響エネルギーが完全に水に吸収されるまで円形水槽内を一方向に周回する.また超音波が振動子面に再入射しないため,擬似的な自由音場が形成される.
【結果】
図に振動子入力電圧に対する70 Wまでの超音波パワー測定結果を示す.15 Wまでの範囲で,一次標準(天秤法)による結果と7%程度で一致することを実証した.
【結論】
水を発熱体とするカロリメトリ法の利点は,音響的,熱的物理特性が既知であり,安定且つ容易に入手可能な物質を発熱体として利用できる点にある.一方,振動子面の発熱に起因する水温上昇が超音波パワー測定に影響するため,標準供給の仲介器として使用する振動子は,発熱の小さい,即ち内部損失の小さい材料であることが必要となる.また水温上昇から超音波パワーを算出する際に水の比熱容量の値を用いるが,これまでの実験の結果,文献等に掲載されている酸素飽和水の値と,超音波パワー測定で用いる脱気水の値とで異なることがわかった.この点については,脱気水の比熱容量の値を測定する必要がある.