Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:産婦人科 奨励賞

(S416)

妊娠初期の超音波計測による胎児発育不全の予測に関する研究

Analysis of ultrasonograpic findings during the first trimester for prediction of fetal growth restriction

濱田 尚子, 長谷川 潤一, 仲村 将光, 宮上 景子, 三科 美幸, 松岡 隆, 市塚 清健, 岡井 崇

Shoko HAMADA, Junichi HASEGAWA, Masamistu NAKAMURA, Keiko MIYAGAMI, Miyuki MISHINA, Ryu MATUOKA, Kiyotake ICHIDUKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

obstetrics and gynecology, Showa University School of Medicine

キーワード :

【目的】
胎児発育不全(FGR)は,妊娠中だけでなく出生後の児の発育・発達に影響を及ぼす異常であり,妊娠の早い時期からその可能性を予測できれば,周産期や新生児管理の一助になると考えられる.今回我々は,妊娠初期に観察可能な超音波所見を用いて,胎児発育遅延のハイリスク例をピックアップすること目的とした研究を行った.
【対象と方法】
対象は,2011年6月から2012年3月に妊娠11週0日〜13週6日で当院の健診を受診し,同意取得後に経腹超音波検査を行い,かつ当院で妊娠24週以降に分娩に至った症例である.妊娠中または出生時に形態異常や染色体異常が認められた症例及び,多胎症例は対象より除外した.妊娠週数は,基礎体温,問診により推定された受胎日,または妊娠8-10週の胎児頭殿長(CRL)により妊娠10週までに決定されたものを用いた.検者は超音波専門医3人で,使用した機器はVoluson E8 (GE health care Japan) 4-8MHz経腹トランスデューサーである.CRL,大横径(BPD),臍帯付着部直下絨毛の厚さ(T),3D超音波による絨毛体積(PV),臍帯付着部から組織学的内子宮口までの距離(D),子宮動脈pulsatility index (UtPI)を測定した.PV測定では,絨毛膜有毛部がすべて取り込まれるように関心領域および角度を調節しボリュームデータを取り込み,VOCAL (Virtual Organ Computed-acid Analysis)法を用いて30度ごと6回トレースを行い計算した.各計測値は在胎日数で標準化したz-scoreを用いて検討した.出生児体重が日本人の基準値の-1.5SD未満をCase,それ以外をControlとし,FGRを予測するための超音波所見のROC曲線を作成し検討した.本研究は当院の倫理委員会の承認を得て施行した.
【結果】
1003例の対象について検討を行った.Case, Controlにおける各計測値のz-scoreはそれぞれ,CRL -0.5±1.2, 0.0±1.0(<0.01), BPD -0.6±1.0, 0.0±1.0(<0.01), T -0.3±0.8, 0.0±1.0(p=0.03), PV -0.5±1.1, 0.0±1.0(<0.01), D -0.3±0.9, 0.0±1.0(p=0.172), UtPI 0.3±1.1, 0.0±1.0(p=0.04)であった.Caseを予測するROC曲線のAUC(95%信頼区間)はそれぞれ,CRL 0.651(0.547-0.756), BPD 0.705(0.609-0.800), T 0.597(0.503-0.690), PV 0.647(0.535-0.759), UtPI 0.668(0.575-0.762)であった.重回帰分析により,出生体重のSD値を推定するのに適したモデルは,0.128 x CRL+0.087 x BPD+0.108 x PV - 0.14 x UtPI+0.021と求められ,これによるFGR予測のAUCは0.746 (0.650-0.842)であった.
【結論】
妊娠初期に超音波でCRL, BPD, 胎盤体積および子宮動脈PI値を測定することによって胎児発育不全を予測し得る可能性,及び予測の精度を示すことができた.