Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:消化器 奨励賞

(S415)

膵臓の超音波検査におけるAcoustic Structure Quantification (ASQ)法の有用性の検討

Habitual alcohol consumption related with high ultrasonographic homogeneity values of pancreas among medical checkup examinees

八島 陽子

Yoko YASHIMA

杏雲堂病院消化器肝臓科

Hepatogastroenterology, Kyoundo Hospital

キーワード :

【背景】
Acoustic Structure Quantification (ASQ)法は超音波で得られた画像の不均一性を定量評価する方法であり汎用機で簡便に測定が可能である.均一な物体での値は100であり不均一になると値が高くなる.近年,経皮の超音波装置の進歩により,超音波内視鏡で慢性膵炎の早期変化像として報告されるような所見が経皮検査で見られることもある.このような微細な変化を定量評価できるのがASQ法と考え,我々は,本研究を計画した.
【目的】
ASQ法は膵臓の評価に有用であるか検討する.
【方法】
2012年4月から11月の間の当院のドック受診者を対象とした.全例腹部症状はなく,膵疾患の既往のない健常成人であり,文書による同意を取得した.超音波診断装置はAplio XG(東芝メディカルシステムズ社製)を用い,通常の検査の間にASQモードで膵体部の写真を撮影し,後日保存された写真の膵体部にROIを設定し,ASQ値を測定した.値は各例で3回以上測定し中央値を用いた.ASQ値として,ヒストグラム機能で表示される値の中から既報で肝の線維化と関係するとされるMode値を使用した.ASQ値と,年齢・性別・BMI・血液検査データ(γGTP, AST, HbA1c, TG)・飲酒習慣・喫煙習慣・Bモードでの検査所見との関係を解析した(t検定および相関解析).飲酒習慣は週4日以上1日1合以上,喫煙習慣は毎日10本以上を習慣有りとした.本研究は当院の倫理委員会承認を得た.
【結果】
計231人の膵体部画像を解析した.背景は平均年齢46歳,男性130人,BMI平均22.1 kg/m2,飲酒習慣ありが89人,喫煙習慣ありが55人,Bモード所見でBright pancreasが 14人であり,実質粗と判断されたものは無かった.血液検査結果の平均値はγGPT 34.9IU/l,AST 21.0IU/l,HbA1c 5.4%,TG 110.7mg/dlであった.ASQ値の平均は130Cm2であった.解析で有意差が得られたのは2因子で,①飲酒習慣:あり群で134Cm2,なし群で128Cm2(p<0.05)(図)と,②Bモード所見:Bright pancreas群で115Cm2,非Bright pancreas群で130Cm2 (p<0.001)であった.他の因子の解析ではASQ値との相関に有意差を認めなかった.
【考察】
飲酒による膵実質の病理学的変化(線維化)をASQ法で拾い上げている可能性がある.また,膵実質への微慢性脂肪沈着を反映し値が低くなる可能性がある.また,検査期間において人間ドックの検査時間にほとんど影響を与えず簡便であった.
【結語】
ASQ法は膵実質の病理学的変化を反映している可能性がある.