Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:循環器 奨励賞

(S411)

左室収縮不全例におけるβ遮断薬による心機能改善機序についての検討

Beta-blockade Reduces Ventricular Wall Stress along with Inhibition of Collagen Degradation in Patients with Left Ventricular Systolic Dysfunction

福井 美保, 中坊 亜由美, 合田 亜希子, 正木 充, 藤原 昌平, 菅原 政貴, 廣谷 信一, 増山 理

Miho FUKUI, Ayumi NAKABO, Akiko GODA, Mitsuru MASAKI, Shohei FUJIWARA, Masataka SUGAHARA, Shinichi HIROTANI, Tohru MASUYAMA

兵庫医科大学循環器内科

Department of Internal Medicine, Cardiovascular Division, Hyogo college of Medicine

キーワード :

【背景】
左室収縮不全例において,β遮断薬の長期連用により左室のリバースリモデリングをきたし,長期予後が改善することが報告されている.しかし,その機序についてはまだ十分には解明されていない.ラプラスの法則により左室壁応力は,心室内圧が同様であっても,心室の大きさにより増大することが知られている.左室収縮不全例では,左室拡大により左室壁応力が増大し,コラーゲン代謝が促進され,さらなる左室拡大をきたすという悪循環が生じること,一方,β遮断薬はこの悪循環を断ち切ることにより,リバースリモデリングを促進している可能性がある.
【目的】
左室収縮不全例に対するβ遮断薬投与が,左室壁応力やコラーゲン代謝に及ぼす影響について検討すること.
【方法】
対象は2006年3月から2009年12月までに兵庫医科大学病院に通院または入院した慢性心不全例または無症候性左室機能不全例.このうちすでにACEI/ARBおよび利尿薬等の標準的治療は施行されているがβ遮断薬は未導入であり,少なくとも1か月間は病状が安定している62例について前向きに検討を行った.明らかな呼吸器疾患,腎機能障害,心臓手術後,弁膜症,人工弁例は除外した.β遮断薬(bisoprolol)を導入し,5−10mgを目標に増量した.β遮断薬導入前,1および6か月後に心エコー図検査とコラーゲン代謝の生成マーカーである血中PICPと分解マーカーであるCITPを測定した.左室壁応力は収縮期血圧とエコー指標から下記の式にて算出した.Left Ventricular Peak Wall Stress=0.86×(0.334×収縮期血圧×左室拡張末期径)/[左室後壁厚×(1+(左室後壁厚/左室拡張末期径))]-2
【結果】
β遮断薬導入後,左室駆出率(EF)は徐々に改善し,一方左室壁応力とCITPは徐々に減少した.β遮断薬導入6か月後において,EFと左室壁応力およびCITPの変化量は有意に相関した(r=-0.38, p<0.01, r=-0.36, p=0.03).また左室壁応力とCITPの変化量も有意に相関した(r=0.42, p=0.01).一方,PICPとEFおよび左室壁応力の変化量の間に有意な相関はなかった.
【結論】
左室収縮不全例においてβ遮断薬は,左室壁応力の低下を介して,左室のリバースリモデリングをおこす.その機序にはコラーゲン代謝の抑制が関与していることが示唆された.