Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:循環器 奨励賞

(S410)

サルコイドーシスにおける障害心筋早期発見の試み-スペックルトラッキングを用いて-

Early abnormality detected by speckle-tracking echocardiography in patients with extra-cardiac sarcoidosis

折居 誠, 平田 久美子, 谷本 貴志, 寺口 郁子, 太田 慎吾, 久保 隆史, 今西 敏雄, 赤阪 隆史

Makoto ORII, Kumiko HIRATA, Takashi TANIMOTO, Ikuko TERAGUCHI, Shingo OTA, Takashi KUBO, Toshio IMANISHI, Takashi AKASAKA

和歌山県立医科大学循環器内科

Department of Cardiovascular Medicine, Wakayama Medical University

キーワード :

【目的】
サルコイドーシスによる死亡の約半数は心病変が原因であり,早期診断と早期治療が重要である.経胸壁心エコーにおける収縮能低下や壁の非薄化といった特徴的な所見は,病状が進行した例に出現するとされるため,心サルコイドーシスの早期診断には,ガドリニウム心臓造影MRIの遅延造影による,障害心筋の検出が有用とされている.そこで我々は局所的な壁運動の変化を鋭敏に評価しうるスペックルトラッキング法を用いれば,早期の心サルコイドーシス病変を同定しうると仮定し,遅延造影MRIとの比較を行った.
【対象】
既知の心臓病変を有さない,心臓外サルコイドーシス42例(肺病変;28例,皮膚病変;11例,眼病変;10例),また性別,年齢をマッチさせた正常コントロール群10例.
【方法】
全例に経胸壁心エコー検査とガドリニウム造影心臓MRI検査を行った.除外基準は,心臓病変を示唆する所見(心電図異常,左室の壁運動・形態異常)および造影心臓MRI禁忌例(腎機能低下,体内金属留置,閉所恐怖症).ドップラー及び2Dスペックルトラッキングを施行し,左室16分画のradial strain(RS),circumferential strain(CS),longitudinal strain(LS)解析を行った.
【結果】
心電図で軸偏位を認めた1例と心エコー検査にて壁運動異常を認めた1例を除く40例625分画を対象に検討を行った.ガドリニウム造影心臓MRIで10症例(27分画)に遅延造影を認めた.遅延造影陽性例と陰性例の間で,性別・年齢・サルコイドーシスの治療歴に明らかな差は認めず,左室駆出率の差も認めなかった(61±3% vs. 61±3%, p=0.92).また,遅延造影陽性の27分画では,陰性および正常コントロール群の分画に比して,有意にCSおよびLSの低下を認めた(CS: -13±6%(陽性群) vs. -29±7%(陰性群) vs. -30±7%(正常コントロール群), p<0.001, LS: -20±5%(陽性群)vs. -22±5%(陰性群) vs. -23±5%(正常コントロール群), p=0.03).RSでは,3群間に有意な差を認めなかった(43±19%(陽性群) vs. 45±23%(陰性群) vs. 46±18%(正常コントロール群), p=0.73).
【結論】
明らかな心電図・壁運動異常を有さない心臓外サルコイドーシスの25%に心臓病変を認め,同部位におけるストレイン値は低下していた.本研究の結果は,心臓サルコイドーシスの早期診断において,スペックルトラッキングの有用性を示す根拠になり得るものと考えられた.