Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:基礎 奨励賞

(S409)

画像処理を利用したBモード超音波検査法による不顕性誤嚥の検出方法の開発

Detection method of silent aspiration by B-mode video ultrasonography combined with image processing

三浦 由佳1, 仲上 豪二朗1, 薮中 幸一1, 2, 小西 英樹3, 戸原 玄4, 野口 博史5, 森 武俊5, 真田 弘美1

Yuka MIURA1, Gojiro NAKAGAMI1, Koichi YABUNAKA1, 2, Hideki KONISHI3, Haruka TOHARA4, Hiroshi NOGUCHI5, Taketoshi MORI5, Hiromi SANADA1

1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻老年看護学/創傷看護学分野, 2医療法人大植会葛城病院超音波室, 3医療法人大植会葛城病院リハビリテーション科, 4日本大学歯学部摂食機能療法学講座, 5東京大学大学院医学系研究科ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座

1Department Gerontological Nursing/ Wound Care Management, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo, 2Department of Ultrasound, Katsuragi Hospital, 3Department of Rehabilitation, Katsuragi Hospital, 4Department of Dysphagia Rehabilitation, Nihon University School of Dentistry, 5Department of Life Support Technology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo

キーワード :

【目的】
誤嚥後に咳がおこらない不顕性誤嚥を検出するためには画像評価が不可欠であり嚥下造影検査(VF),嚥下内視鏡検査(VE)が広く行われているが,侵襲性や専用の設備の必要性といった理由からスクリーニング検査としては適さない.超音波検査(US)は簡便性,非侵襲性,リアルタイム性に優れており,既に我々は気管内の誤嚥が高輝度エコー像として観察されることを報告している.本研究では更に症例数を重ねUSが不顕性誤嚥の検出方法として有用であるかを,同時に行ったVFまたはVEを基準として検討した.また,感度を向上させるために画像処理を取り入れた.
【対象と方法】
摂食嚥下外来においてVFまたはVE検査を施行した患者20名に対して同時にUSを施行した.プローブはBモード画像上で正中矢状断面が抽出できるように甲状軟骨上に当て,声帯を画面の中心とし,VF/VEの検査毎にBモード動画を撮影した (Fig. 1).USは携帯用超音波診断装置 M-Turbo(Sonosite社製),リニア型汎用プローブ(6-15MHz)を用いた.まず肉眼的観察におけるエコー上の誤嚥所見の検出感度を測定した.続いて検出できなかった原因について検討し,画像処理によるイメージの鮮明化,誤嚥所見と思われる領域の特徴の測定とフレーム間の相関を利用した領域の絞り込み,候補となった領域の輪郭に対する着色を行った (Fig. 2).この処理画像を観察の補助に用いて感度,特異度を算出した.
【結果】
17名分の42枚のUS動画像を用いて解析を行った.感度は64%,特異度は84%であり検出できなかった誤嚥は全て粘性の低い液体の誤嚥であった.画像処理を補助として用いた結果感度は82%,特異度は81%であり元画像のみでは検出できなかった2枚の不顕性誤嚥と1枚の顕性誤嚥を検出することが可能となった.
【考察】
本研究はBモードUS動画において画像処理を取り入れることにより不顕性誤嚥を高感度で検出可能であることを初めて示した.US動画像上では嚥下運動に伴う軟部組織の動きも抽出される上粘性の低い液体の誤嚥は検出期間が短く肉眼的観察のみで誤嚥を判別することは困難だったと思われる.今回画像処理を補助として用いたことでこれらの問題を克服することが可能となった.
【結語】
超音波Bモード動画による声帯をランドマークとした観察方法で気管内の誤嚥所見を捉え,適切な画像処理を利用した結果感度82%,特異度81%であり不顕性誤嚥の検出手法として活用できる可能性が示唆された.