Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:基礎 奨励賞

(S409)

空間領域干渉計法による中大脳動脈の超音波血流速度測定法の基礎検討

A basic study of ultrasound blood velocity estimation in middle cerebral artery using spatial domain interferometry

奥村 成皓1, 喜田 亜矢2, 瀧 宏文3, 佐藤 亨3

Shigeaki OKUMURA1, Aya KITA2, Hirofumi TAKI3, Toru SATO3

1京都大学工学部, 2坂井瑠実クリニック脳神経外科, 3京都大学大学院情報学研究科

1Faculty of Enginnering, Kyoto University, 2Neurosurgeon, Sakai Rumi Clinic, 3Graduate School of Informatics, Kyoto University

キーワード :

【はじめに】
くも膜下出血の術後管理において血管攣縮による脳虚血を防止することは重要である.血管攣縮による血管狭窄を非侵襲的に診断する手法として超音波ドップラー法による中大脳動脈血流測定法が提案されているが,頭蓋骨からの干渉波により測定困難である.本研究では現在脳外科領域で使用されている少数素子アレイに空間領域干渉計法とCapon法を適用することを想定し,中大脳動脈の血流速度推定の可能性を検討する.
【提案法】
Capon法を用いた空間領域干渉計法は所望方向の出力を一定とした上で出力電力を最小化し,干渉波の寄与を抑圧する手法である.本手法では所望波・干渉波間の相関を抑圧する必要があるが,少数素子アレイでは空間平均を行うことが困難であるため,本研究では深さ方向のみに各素子の受信信号間の相関行列の平均を行う.また,医用超音波イメージングでは距離分解能が要求されるため,本研究では大電力の干渉波が存在する条件下での適切な距離平均幅,送信パルス長について検討を行う.
【実験方法と結果】
4素子から成るリニアアレイを想定し,送信波の中心周波数を4.5 MHzとし,送信パルス長を5〜20波長とした.ただし,素子間隔,素子幅を共に2 mmとした.アレイに向かって1 m/sで並進運動する赤血球からの所望波が正面方向から到来し,静止している頭蓋骨からの干渉波が正面方向から5度の方向から到来するとし,所望波の干渉波に対する電力比を40 dBとした.図1に各レンジ方向の平均化距離,送信パルス長における推定血流速度を示す.速度推定誤差が0.1 m/s以下となる距離方向の平均距離は,送信パルス長が5波長のとき3 mm以上,10波長のとき2.25 mm以上,20波長の場合5.25 mm以上必要であった.狭帯域信号を用いる場合,使用帯域内のビームパターンにばらつきが少なく特定の干渉波方向抑圧に適する反面,受信信号の深さ方向への相関長が長く,相関抑圧に必要な平均距離が長くなる.相関抑圧に必要な距離は距離分解能と一致するため,送信パルス長の最適化が提案法の特性に重要であることが示唆された.
【結論】
送信パルス長の最適化を行い距離方向に各素子の受信信号間の相関行列を平均することで,Capon法を用いた空間領域干渉計法により4素子のリニアアレイで頭蓋骨からの大電力干渉波を抑圧し中大脳動脈の血流速度推定が可能であることが示唆された.