Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:基礎 奨励賞

(S407)

マルチレイリーモデルによる肝炎線維組織画像化手法の検討

An imaging method of fibrotic tissue for liver fibrosis using Multi-Rayleigh model

樋口 達矢1, 平田 慎之介1, 山口 匡2, 蜂屋 弘之1

Tatsuya HIGUCHI1, Shinnosuke HIRATA1, Tadashi YAMAGUCHI2, Hiroyuki HACHIYA1

1東京工業大学大学院理工学研究科, 2千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター

1Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University

キーワード :

【目的】
正常肝からの超音波エコー信号の振幅分布はレイリー分布で近似できるが,びまん性肝疾患では,病変進行に伴い組織構造が変化し,振幅分布がレイリー分布から逸脱していく [1].我々は病変肝の振幅分布特性を評価するために三つのレイリー分布を組み合わせたモデル(3成分マルチレイリーモデル)を提案し,このモデルにより肝炎線維化が定量評価できる可能性を示した[2].これまでの検討は,エコー画像上で設定した注目領域(ROI)単位の評価であり,ROI中の個々の画素の振幅値に対しての評価は行っていない.しかし,各画素が持つ振幅値は生体組織の音響特性を反映する有益な情報である.そこで,本報告ではマルチレイリーモデルに基づき画素ごとに組織性状判定を行い,線維組織を画像化する手法の検討を行った.
【方法】
マルチレイリーモデルは,線維組織,肝実質部,血管・結節内部からのエコー信号の振幅分布をそれぞれ高,中,低分散レイリー分布の和により表現する振幅分布モデルである.ROI中の,ある点の振幅値を表現するモデルの各要素の重みは,その点がどの組織に属するかの確率と考えることができる.高分散レイリー分布の重みを,その振幅値を持つ画素が線維組織である確率だとし,エコー画像の全画素に対してこの確率を求め,確率が閾値以上となるものを抽出することで線維組織を画像化する.臨床データに対して画像化を行い,先行研究で提案されているCFAR (Constant False Alarm Rate) 処理を用いた手法と比較する.また,肝臓内で線維として抽出された画素の数を指標として肝炎線維化を定量評価する手法について検討する.
【結果】
CFAR処理を用いる従来手法ではデータの振幅分布がレイリー分布となる正常肝でも高振幅値を持つ画素は一定の割合で線維組織として検出されるが,提案手法ではあらかじめROI中の振幅分布特性を推定するため誤検出を防ぐことができることわかった.また,肝臓内において線維組織として抽出される画素の数は病変の進行とともに増加することがわかった.以上の結果から,提案手法は従来手法より精度よく線維組織を抽出できることが示され,抽出情報を用いた肝炎線維化定量評価の可能性が示された.
【参考文献】
[1]T. Yamaguchi, H. Hachiya, Jpn. J. Med. Ultrasonics, 37(4) 155 ( 2010).
[2]樋口達矢,山口匡,蜂屋弘之,日超医第85回学術集会,Vol. 39, Supplement, S359, Apr. 2012.