Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

奨励賞演題:基礎 奨励賞

(S405)

光超音波イメージングにおける周期的単極M系列符号を用いた符号化多波長同時励起法

Simultaneous Multispectral Photoacoustic Imaging by Coded Excitation Using Periodic and Unipolar M-sequence

張 海崇1, 近藤 健悟1, 山川 誠2, 椎名 毅1

Haichong ZHANG1, Kengo KONDO1, Makoto YAMAKAWA2, Tsuyoshi SHIINA1

1京都大学大学院医学研究科, 2京都大学先端医工学研究ユニット

1Graduate School of Medicine, Kyoto University, 2Advanced Biomedical Engineering Research Unit, Kyoto University

キーワード :

【背景・目的】
光超音波イメージングは,光と超音波を組み合わせたモダリティであり,光による機能的情報と,超音波による深部情報を得ることができ,近年,乳がん診断への応用を目指した研究も進められている.一方,光超音波イメージングが抱える課題として,入射光の減衰により,深部からの光音響信号のSNRが低下するという問題がある.また,複数波長の情報を利用することで血中酸素飽和度の算出が可能となるが,現在は各波長を分けて送信する必要があり,フレームレート低下の要因となっている.本研究では,高SNRかつ高フレームレートを実現するために符号化多波長同時励起法を検討した.
【方法】
本手法では,符号化されたパルスを送信し,復号化を行うことで,加算平均に比べ短い計測時間でSNRを高めることができる.また,符号間の相互相関特性が低い符号を利用することで,多波長信号の同時送信が可能となる.先行研究では,Gold符号を始めとするM系列関連符号を用いた検討を行ったが,符号生成の制約において周期的符号送信ができず,不安定な符号化アーティファクト(サイドローブ,クロストーク)が発生する.本報告では,周期的単極M系列符号を用いた符号化多波長同時励起法を提案する.通常M系列符号は双極符号であるが,周期的単極M系列符号はM系列符号の正の符号のみより構成され,周期的に送信でき,復号化の際にはM系列符号が用いられる.特徴として,単波長送信においてサイドローブを発生させず,二波長同時送信におけるクロストークの大きさは,符号長に応じて一定値を示す.
【結果・考察】
提案手法の有効性を確認するため,単波長送信と二波長同時送信を想定したシミュレーションをそれぞれ行った.図1に単波長送信を想定した従来の非周期的M系列符号を用いた結果と周期的単極M系列符号を用いた結果を示す.ここで,提案手法において従来法で発生していたサイドローブが発生していないことを確認した.また,生体疑似ファントム(周囲:2.5%寒天,0.3 mmワイヤー)を用いた実験を行い,シミュレーションと同等の結果が得られることを確認した(63-bit単波長送信で11.62 dBのSNR向上を確認).これらの結果から,光超音波イメージングにおける周期的単極M系列符号を用いた符号化多波長同時励起法が有用であることが示唆された.