Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 整形外科
パネルディスカッション19 <治療に活かす> 整形外科領域の超音波:診断から治療まで使い倒す

(S395)

整形外科診療における超音波の活用方法:診療に貢献するソノグラファーの役割

How to take advantage of ultrasound in Orthopaedics practice:The role of the sonographer that contribute to practice

前田 佳彦, 今田 秀尚, 田淵 友貴, 木村 友哉, 前田 紘代, 鈴木 智哉, 桑山 真紀, 玉木 繁, 佐野 幹夫

Yoshihiko MAEDA, Hidenao IMADA, Yuki TABUCHI, Tomoya KIMURA, Hiroyo MAEDA, Tomoya SUZUKI, Maki KUWAYAMA, Shigeru TAMAKI, Mikio SANO

医療法人豊田会刈谷豊田総合病院放射線技術科

Department of Radiological Technology, TOYOTA-KAI Medical Corporation KARIYA TOYOTA General Hospital

キーワード :

【当院における整形外科超音波検査のミッション】
当院は,刈谷市,高浜市並びにトヨタグループ8社により運営される医療法人である.病床数635床の急性期病院で,1日平均2000名弱の外来患者が来院する.整形外科常勤医は10名で,整形外科超音波検査に対応可能なソノグラファーは3名である.整形外科以外にも共通して言えることだが,地域連携強化の方針のもと積極的に地域の“かかりつけ医”を紹介している.そのため,超音波検査の対象患者は,アキレス腱断裂や筋挫傷などスポーツ中の受傷,肋骨骨折や患部の痛みなどの交通外傷後などもっぱら急性期疾患が中心である.加えて,ばね指や腱鞘炎,肩の痛み,肘の痺れ,リウマチ患者など診療範囲の幅は広い.これらの背景から,当院では,超音波検査を整形外科初期診療におけるトリアージ的な位置づけとして活用している.
【検査体制構築までのプロセス−一例として−】
初診患者の多い曜日に時間を決めて,診察室に装置を持ち込んだ立ち上げ当初を振り返ると,ひたすら全身に探触子を当て,濃厚なディスカッションをしたこと(臨床的なこと以上に対面で生まれた信頼関係のようなものが築けたことの方が大きかったと感じている)は,体制構築をする上で重要なポイントであった.加えて,超音波検査が有用で遭遇頻度の高い症例の把握に繋がったこと(患者背景の特徴が掴めた)は,後に他のソノグラファーや医師への教育をスムーズにした.このような体制で,医師が超音波画像に慣れるとともに有用性を実感したが,急性期病院の煩雑な外来では,施行可能な件数や時間の限界がみえてきた(施行可能なソノグラファー・医師の育成の必要性を痛感する).そこで,「超音波室で施行することで更に数を増やせ効率的(新規患者だけでなく経過観察では診察前に予約施行できるなど)ではないか」と意見が合致し,その後,超音波室で施行するようになった(超音波室でソノグラファーが施行するデメリットは,リアルタイム性が無くなり有用性が半減することが挙げられる).超音波室で施行して4年半が経過するが現在は,整形外科外来にも装置を導入している.
【診療支援としてのソノグラファーの役割】
施設規模や所属する医療機関の方向性により,ソノグラファーの役割は様々であるが,「診療支援」という言葉は共通して言えることである.整形外科超音波検査では,動的観察が特徴の一つという側面がある.そのため,医師が外来で施行することは,理想的であると一般に言われる(私もそう思う).ソノグラファーは,超音波検査のプロフェッショナルである(そうありたい).探触子走査に慣れた医師にとって,外来で超音波を使いこなすことは容易である.しかし,不慣れな医師が多く存在するのも事実である.そのような施設では,ソノグラファーの支援の形は多様化する.つまり“検査をこなすだけ”ではなく,評価項目の統一やレポート記載方法など検査体制の仕組みを構築し,医師とのカンファレンスなどを通して臨床力を向上させ,診療の質向上にも貢献できる.いわば,広義のマネジメントの意識を持つことで,医師の負荷を軽減し,医師は医師しか出来ないことに集中できる環境を作ることにも繋がる.医師側の視点に立てば,“ソノグラファーを上手に使いこなす”ことは,超音波検査を身近にする術となる.ソノグラファーの“役割”は,本人の気概によって多様に変化するため,まずは,整形外科超音波チームの一員として,「顔の見える関係」を築くことが第一歩と考える.