Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション25 <教育に活かす> 血管エコー検査のエデュケーション

(S389)

クリニックにおける技師の教育

Education of Sonographers in Clinic

尾崎 俊也

Toshiya OZAKI

幸循会OBPクリニック臨床検査科

Clinical Laboratory, Kojunkai OBP Clinic

キーワード :

【はじめに】
私は,30年近く超音波検査を中心に血管領域の検査に携わって来た.最初の10年弱は循環器専門病院で,それ以後の20年以上はクリニックで勤務し,現在は,超音波検査の指導的立場でルーチン業務にも従事している.今回は,この経歴をもとに,総合病院や大学病院と比較して,クリニックが抱える血管エコー検査の技師(sonographer)教育の問題点と課題について,当クリニックでの教育方針と教育カリキュラムを紹介しながら報告する.また,最後に私見ではあるが,今後の技師教育の在り方について述べる.
【クリニックが抱える問題点】
●専門医・指導者の不在・一般的なクリニックでは,血管内科医,血管外科医,さらには血管領域の超音波読影医が不在で,専門的な知識の習得は院外のセミナーや書籍に限定される.・医師による教育は皆無で,必要十分な教育を受け臨床経験が豊富な技師(先輩)による実技指導を受ける機会もまれである.
●クリニック経営の影響・コスト重視の経営により検査時間の制約が厳しく,ルーチン検査中の実地での指導教育が困難である.・少人数スタッフによる勤務体制や休暇取得の制約により,学会や教育セミナーへの参加が制限される.
●施設環境の不備・普及機で,かつ老朽化した超音波装置が使用されている施設も多く,検査技術の習得に多くの時間を要する.・PACSなど画像管理システムが整備されていないため,過去画像の比較,閲覧に時間を必要とする.・血管造影,MRAなど高度な医療機器が設置されていないので,他の画像診断との比較評価が困難な症例が多い.
●臨床経験の障壁・総合病院や大学病院と比較して,重症や特殊な症例を経験する機会が少なく,十分な臨床経験に少なくとも数年を要する.・クリニックでは入院施設が無く,治療を必要とする患者は後方病院に転院することが多いため,重症患者や治療前後の経過観察,さらに,治療方法や確定診断などの情報を得るのが困難である.・外科治療施設がないので,術前,術後の評価を経験する機会が少ない.
【まとめ】
クリニックに限定されないが,現状の医療(医業?)は,検査の質ではなく,1件あたりの検査時間や1日の検査数が常に問われる状況で,ついつい“乱雑な検査”,“汚い画像記録”,“いい加減なレポート”が常習化し,技術レベルの向上どころか維持さえ困難な状況である.さらに,技師の教育となると,ルーチン業務と認識されず,教育者はボランティア的な扱いを受けている.その結果,教育者のモチベーションの低下が,技師教育の大きな障害となり,強いては技師全体の質の低下につながっている.また,施設外の教育として,最近は,血管領域においても教育セミナーや実技指導が多く開催されているが,“臨床に役立つ”教育としては,まだまだ不十分と感じる.私の結論は,医師,技師,メーカーが共同で,新人技師および指導者のsonographer育成施設を設置し,さらに大学病院を中心とした臨床実習システムの構築を強く望む.