Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション16 <治療に活かす> 動脈硬化超音波診断の最前線

(S384)

IMT(intima-media thickness)の測定

Carotid intima-media thcikness as a surrogate marker for cardiovascular events

北川 一夫

Kazuo KITAGAWA

大阪大学大学院医学系研究科神経内科(脳卒中センター)

Department of Neurology, Stroke Center, Osaka University

キーワード :

頸動脈内膜中膜厚(intima-media thickness)は,超音波検査により非侵襲的に評価可能な動脈硬化重症度の指標である.内頚動脈分岐部はアテロームプラーク好発部位であり 総頸動脈 頸動脈分岐部 内頚動脈各々の近位壁 遠位壁のプラーク厚を含む最大IMTを求め平均値を算出する方法が一般的である.頸動脈超音波検査では頸動脈分岐部に狭窄性病変が見られれば,狭窄率の計測,血流速度の計測も併せて行う必要がある.頸動脈IMTは,心血管疾患既往,年齢,性別,高血圧,糖尿病,脂質異常,喫煙などの動脈硬化危険因子と相関を示すことが知られている.我々は頸動脈IMTと血液炎症マーカー濃度との関連を検討し,血清炎症マーカーIL18濃度が頸動脈IMTと中等度の関連を示すことを報告してきた(Arterioscler Thromb Vasc Biol, 25:1458, 2005).さらに複数の臨床疫学研究で頸動脈IMTが既知の動脈硬化危険因子とは独立して将来の脳卒中,心筋梗塞の発症リスクを予測する事が明らかとなりIMTが心血管疾患サロゲートマーカーとして広く認識され,日常臨床のみならず健康診断でも採用されている.我々は外来通院中の心血管疾患ハイリスク患者を対象として前向きに予後を追跡調査するOSACA2研究を実施しているが,心血管ハイリスク患者においてもIMTは危険因子とは独立して将来の心脳血管イベントを予測することを明らかにしてきた(図)(Cerebrovasc Dis, 24:35, 2007).IMT測定により薬剤の抗動脈硬化作用を,IMT退縮,進展抑制といった指標でより安全に評価できるようになった意義も大きい.スタチン,インスリン抵抗性改善薬,シロスタゾール,カルシウム拮抗薬等の抗動脈硬化作用がIMTを指標として報告されている.頸動脈IMT計測は,各時点での個々の症例の心脳血管イベント発症リスクの評価に有用であり,患者指導,使用薬剤の選択に際して有用な情報を提供する.今後の課題としては頸動脈IMTの進展した症例で各動脈硬化危険因子を如何に管理していくかが挙げられる.また頸動脈IMTは薬剤介入効果の指標としてよく用いられているが,頸動脈IMT進展抑制と心血管イベント発症予防の間の関連性は明らかでない.最近発表されたPROG-IMT試験の結果では,頸動脈IMT進展はイベント発症と関連性が少ないことが報告されている.少なくとも日常臨床では,頸動脈狭窄等を認めない限り頸動脈IMT検査を短期間に経時的に繰りかえし行う必要はないと考えられる.