Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
パネルディスカッション10 <診療に活かす> 血管エコー検査ガイドラインを検証する

(S381)

下肢動脈エコーによる狭窄の評価

Estimation for degree of stenosis of PAD by duplex ultrasound of the lower extremities

山本 哲也1, 松村 誠2

Tetsuya YAMAMOTO1, Makoto MATUMURA2

1埼玉医科大学国際医療センター中央検査部, 2埼玉医科大学国際医療センター心臓内科

1Central Laboratory, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan, 2Cardiology Department, Saitama Medical University International Medical Center, Saitama, Japan

キーワード :

【はじめに】
下肢動脈診療におけるガイドラインは『TASC(Trans-Atlantic Inter-Society Consensus)Ⅱ』や『ACC/AHA Guidelines』などが国際的な診療ガイドラインとして発表され,また本邦では日本循環器学会から『末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン』が公表され,臨床に用いられている.
【ガイドラインでのエコー検査の位置づけ】
上記のガイドラインでは血管エコー検査の一般的な見解が述べられているだけで,検査の特徴や位置づけ,具体的な検査手技について多くは記されていない.特に『末梢閉塞性動脈疾患の治療ガイドライン』では,『超音波検査は,専門家が行えば血管造影に代わる手段である.・・・』と記されているだけである.一方,日本超音波医学会から提案された『超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的検査法(案)』では,検査の意義および手技に関して詳細に示されているが,各種治療の適応基準や治療後の評価方法などについては触れられていない.
【狭窄の評価法を検証する】
1.狭窄率の算出日本超音波医学会から出された『超音波による大動脈・末梢動脈病変の標準的検査法(案)』では,『狭窄病変を評価する際には,必須項目として面積狭窄率を基本として,必要に応じて径狭窄率を求める』と記されている.面積狭窄率は末梢血管の狭窄断面が楕円形や半月状などの不整形を呈することが多いことから,長軸断面では適切な評価ができないために必須項目とされている.しかし,下肢動脈領域では血管は比較的深い所にあり超音波分解能による問題がある.また,血管径が細い部位における狭窄率の算出は誤差が大きく,測定精度は低い.狭窄率を測定する際,ガイドラインでは可能な範囲でBモード断層像を用いて行い,カラードプラ法による血流表示をガイドにして測定した場合は,参考値として明記することに定められている.近年開発された高分解能カラー表示を用いた場合,従来のカラードプラ表示に比較し原理上,分解能が高く,はみ出し血流を抑制できることや超音波ビーム入射角度による影響が少なくなる利点があり,Bモードから算出される狭窄率に近似した値が得られる可能は高い.カラードプラに変わる機能として検証が必要である.2.ドプラ法による狭窄の判定パルス及び連続波ドプラ法で狭窄部の収縮期最高血流速度(PSV)が2.0m/secを超える場合,有意狭窄としている施設が多い.しかし,ガイドラインではPSV1.5m/secを超える場合を異常としている.これは病変を見落とさないために基準値を低く設定したものと考えられるが,血流速度の測定は角度補正の影響を受けるため,偽陽性例が増えることが懸念される.パルスドプラ法による狭窄の基準値には角度補正をしない値か,ある一定の角度を考慮すべきかもしれない.ちなみに,末梢動脈疾患における『ACC/AHA Guidelines』では,連続波ドプラ法で最大血流速度を測定することを推奨している.現在,CW対応のリニア型やコンベックス型探触子が実用化され,末梢動脈における狭窄血流の速度を正確に計測することができる状況であり,今後の検証が待たれる.
【おわりに】
ガイドラインは数多くのエビデンスに基づいて作成される.しかしながら最新の技術に関しては,エビデンス不足もやむを得ず,今後の多施設での検討を期待したい.