Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 血管
シンポジウム14 <教育に活かす> 理想とする血管エコー報告書の書き方

(S376)

シェーマで伝えるバスキュラーアクセスエコーの報告書

Vascular access echo report transmitted on the Shema

小林 大樹

Hiroki KOBAYASHI

公立学校共済組合近畿中央病院臨床検査科

department of clinical laboratory, kinki central hospital

キーワード :

【はじめに】
バスキュラーアクセス(Vascular access:VA)に対する超音波検査に従事して10年以上が経過する.これまでに検査手順や観察ポイントに関しては,様々な検討結果や経験から追加,削除を繰り返し改良を重ねている.しかしながら,報告書に関してはその変化に伴って若干の変更はあるものの,VAのシェーマを記載することに関しては大きな変化はない.今回は当院におけるVA超音波検査報告書の現状について述べる.
【当院の報告書】
VA超音波検査では,血流の程度を示す機能評価と狭窄や閉塞病変を観察する形態評価から総合的に判断することが重要である.それらに加えて臨床症状や理学所見の異常を説明するコメントを記載している.臨床症状を認めないスクリーニング検査に対しても,臨床症状が発生しないことを機能および形態評価で証明している.したがって,機能評価の指標となる血流量と末梢血管抵抗指数(resistance index:RI),さらに狭窄や閉塞病変の程度や部位,形態,範囲を理解しやすいシェーマを手書きで記載している.VAが不良と考えられる症例において,経皮的血管形成術(percutaneous transluminal angioplasty:PTA)を想定した場合,バルーンカテーテル径選択の参考となる狭窄部位前後の血管径などを計測している.また外科的再建術を想定した場合,責任病変部位を特定した後に再吻合が予想される部位の動静脈の血管径や性状なども記載している.
【シェーマの活用】
エコー検査の対象となるVAの種類は,自己血管内シャント(arteriovenous fistula:AVF),人工血管内シャント(arteriovenous graft:AVG),動脈表在化に分類される.AVFにおいては手関節部で作製する標準的内シャントから肘部で作製する内シャントまで吻合部位が患者によって異なる.さらに人工血管を用いたバイパス術や上腕における尺側皮静脈転位内シャントなど術式も幅広い.AVGにおいては前腕部および上腕部それぞれのループ型やストレート型がある.VAの種類は多種多様であるがゆえに,血管走行や血行動態,正確な病変部位を文章化するのはきわめて困難である.一方,シェーマを記載することで病変の程度や部位,範囲など詳細に表現できる.このようにして作成された報告書は,診察を行う医師は勿論,穿刺を行う透析室のスタッフも血管走行の確認や穿刺の補助として報告書を確認している.PTAが施行される場合は看護師や診療放射線科技師が,外科的手術では執刀医や助手を務める医師,看護師が術前の情報として目を通している.正確に記載されたシェーマは誰もが一目で理解でき,様々な部署が関わるVA領域においても非常に有用である.
【まとめ】
VA超音波検査におけるシェーマの記載は,直感的かつ視覚的に伝わりやすく,伝えやすい利点を有する.一方で,血管走行を立体的に構築する能力や多少の経験が必要になる.また,シェーマのテンプレート化が困難であることから電子カルテ化が難しいなど課題もある.しかしながら,報告書の作成で最も重要視される“正確な伝達手段”としての役割は充分に果たしている.これまでにペンタプレットを用いた報告形式も試みたが記載に時間を要する.現段階では本法が「理想とする報告書の書き方」であると考えている.