Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション13 <診療に活かす> カテゴリー3の石灰化を掘り下げる:画像診断の特徴と対策について

(S369)

カテゴリー3石灰化病変の超音波画像

Ultrasonic Findings of Calcifications Assessed as Category-3 by Mammography

尾羽根 範員1, 田上 展子1, 山片 重人2, 西村 重彦2

Norikazu OBANE1, Nobuko TAGAMI1, Shigehito YAMAGATA2, Shigehiko NISHIMURA2

1住友病院診療技術部超音波技術科, 2住友病院外科

1Department of Ultrasonic Examination, Sumitomo Hospital, 2Department of Surgery, Sumitomo Hospital

キーワード :

マンモグラフィ検査(以下MMG)にてカテゴリー3と判定された石灰化病変に対して行った超音波検査(以下US)について検討した.
【対象と方法】
対象は2009年1月〜2012年11月に,当院および他院のMMGでカテゴリー3と判定された石灰化病変の精査を目的にUSを行い,診断の確定した85例(年齢31〜73歳,平均49.9歳).疾患の内訳は,良性が80例(異常なしおよび乳腺症75例・87.2%,線維腺腫5例・5.8%),悪性が5例(非浸潤性乳管癌(以下DCIS)3例・3.5%,乳頭腺管癌2例・2.3%).MMGでの石灰化所見は,微細円形集簇性53例(61.6%),淡く不明瞭な集簇性15例(17.4%),微細円形区域性16例(18.6%),微細円形線状1例(1.2%)であった.以上の症例の,USでの石灰化病変の視認性,および検査時点でのUS診断と精査結果について検討した.超音波診断装置は東芝メディカルシステムズAplioXG(805AT・1204BT),日立アロカメディカルPreirus(L74M・Mappie)を使用した.
【結果1:USでの視認性】
指摘された石灰化病変がUSで認識可能だったものは80例(93.0%).認識できなかったものは5例(7.0%)で,そのMMG所見は微細円形集簇性1例(1/53),淡く不明瞭な集簇性3例(3/15),微細円形区域性1例(1/16),微細円形線状0例(0/1)であった.USで視認できなかった5例に悪性症例はなかった.
【結果2:US診断】
点状高エコーに伴い,周囲の豹紋像と比較して大きさが大きいまたはエコーレベルの低い低エコー域が背景となっているもの,点状高エコーが存在する部位の乳腺の厚みに不自然な増加がみられるものなどを,悪性を示唆する所見とした.一方,点状高エコーだけで明らかな低エコー域を伴わないものや充実部分のみられない嚢胞や乳管に伴うものなど,点状高エコーの背景に充実性の病変を思わせる像がみられないものを,良性を示唆する所見とした.それらの有無や程度によって,乳腺症など良性と考えるもの(良性),良性を疑うがDCISなど悪性を否定できないもの(良性疑い),悪性を疑うが良性も否定できないもの(悪性疑い),悪性と考えるもの(悪性)と判定した.良性と判定したもののなかには粗大となりつつあるような石灰化を伴う線維腺腫も含まれていた.以上に基づいた検査時の判定と精査結果を対比したところ,良性とした72例中71例が良性(異常なしおよび乳腺症66例,線維腺腫5例)で1例がDCISであった.良性疑いとした10例中9例が良性で1例がDCISであった.悪性疑いとした2例はDCIS1例と乳頭腺管癌1例で,悪性とした1例は乳頭腺管癌であった.良性・良性疑いと悪性・悪性疑いとで比較したUSの成績は感度100%(3/3例),特異度97.6%(80/82例),正診率97.6%(83/85例)であった.
【考察】
今回の対象はUSより先にMMGが施行されているものの,全例で検査時に画像が参照できた訳ではない.それでも多くの病変がUSで描出可能であった.ただし石灰化と紛らわしい点状高エコーは多く,事前情報のないスクリーニングUSで認識できるかどうかはまた別の問題であろう.MMGでカテゴリー3と判定された石灰化病変のうち悪性は5例(5.8%)であった.点状高エコーに伴う低エコー域の有無を主な良悪性鑑別の根拠としたところ,そのうち4例は少なくとも悪性の可能性ありとしていた.悪性を疑えないとしたものに1例だけDCISが含まれたが,良好な成績であったと思われた.