Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション13 <診療に活かす> カテゴリー3の石灰化を掘り下げる:画像診断の特徴と対策について

(S368)

マンモグラフィにおいてカテゴリー3と判定された乳腺石灰化病変の超音波診断

Ultrasonographic Findings of Microcalcifications Classified as Category3 by Mammography

佐久間 浩1, 2, 大野 美由紀2, 折原 尭子2, 小坂 泰二郎3, 齊藤 光江3, 白石 昭彦4, 荒川 敦5

Hiroshi SAKUMA1, 2, Miyuki OHNO2, Takako ORIHARA2, Taijiro KOSAKA3, Mitsue SAITO3, Akihiko SIRAISHI4, Atsusi ARAKAWA5

1ソノグラファーズ超音波, 2順天堂大学医学部附属順天堂医院乳腺センター, 3順天堂大学医学部附属順天堂医院乳腺科, 4順天堂大学医学部附属順天堂医院放射線科, 5順天堂大学医学部附属順天堂医院病理診断科

1Ultrasound, Sonographers Corporation, 2Breast Center, Juntendo University Hospital, 3Department of Breast, Juntendo University Hospital, 4Department of Radiology, Juntendo University Hospital, 5Department of Pathology, Juntendo University Hospital

キーワード :

【はじめに】
現在,我が国の乳癌検診はマンモグラフィ(以下MMG)がスタンダードとなっており,検診受診率が低いとはいえ,相当数のMMGが施行されている.しかし要精査とされているものには良性疾患が多く含まれており,これらが患者に与える精神的負担や医療費の無駄遣いの観点から「検診の不利益」という言葉も生まれている.なかでもカテゴリー3(以下C-3)と判定された石灰化が要精査とされることが多い.これらが超音波においてどのような像を呈し,また質的診断がどの程度可能であるかを検討した.
【対象】
2011年1月から6月までの当院のMMGにおいて,石灰化のみでC-3と判定された183例のうち,術後乳房5例,豊胸術後1例,超音波未施行1例,6か月以上の経過観察がされていない9例を除く167例を対象にした.
【結果】
1)超音波所見の検討超音波検査において乳癌を疑う腫瘤もしくは低エコー像を認めたもの(C-4・5)は11例であり,そのうち7例が乳癌,4例は良性(VAB2例・MMT1例・FNA1例)であった.良性疾患を疑ったがDCISを否定できなかったもの(C-3)は8例で,これらはいずれも良性(VAB2例・CNB4例・FNA2例)であった.乳腺症や線維腺腫等の良性疾患を考えたもの(C-2)は12例であり,うち7例が良性(VAB2例・CNB1例・FNA4例),5例は経過観察において不変であった.嚢胞を認めたもの(C-2)は86例で,うち16例が良性(VAB14例・CNB2例),70例は経過観察において不変であった.乳腺内に石灰化のみを描出したもの(C-2)は7例であり,そのうち1例は乳癌(DCIS),6例は経過観察され不変であった.全く所見を認めなかったもの(C-1)は43例で,うち1例は乳癌(DCIS),4例は良性(VAB3例・CNB1例),38例は経過観察され不変であった.2)乳癌症例の検討乳癌は9例(5.4%)であった.そのうち7例は超音波で乳癌を疑う腫瘤もしくは低エコー域を描出した.残る2例のうち1例は石灰化のみを描出,1例は異常所見を認めなかったが,これら2例はいずれもDCISであった.
【考察】
MMGにおいてC-3の石灰化を認めた症例のうち乳癌は5.4%(9/167)であったが,超音波で描出できなかった乳癌は1.2%(2/167)にすぎず,これらはいずれもDCISである.患者にはこのことを十分に説明し,C-3の石灰化に対して過度の不安を抱かせることは避けたい.今回,超音波検査で悪性が疑われなかった148症例に対して,VABやMMTが行われた例が25例(17.1%)と比較的少なかった点は,すでに超音波診断がある程度信頼されているものと評価できる.もちろん経過観察例のなかに乳癌が潜んでいる可能性は否定できないが,これらはDCISである可能性が高い.よって,超音波で異常を認めない例に対しては,MMGにおいて慎重に経過観察を行えば,過度の侵襲は避けることができると考えられた.