Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション12 <教育に活かす> 百花繚乱! 乳房超音波検査用語

(S366)

乳房超音波検査用語:病理の立場から

Significance of technical terms of breast ultrasound: From the standpoints of pathologists

森谷 卓也

Takuya MORIYA

川崎医科大学病理学2

Department of Pathology, Kawasaki Medical School

キーワード :

画像診断では,病理組織像との対比が極めて重要である.乳腺疾患においても,乳癌の組織型は極めて多彩であり,決して一様ではなく,かつ組織型ごとに鑑別対象となる良性疾患も異なっている.さらに,良性疾患個々も,その形態にバリエーションが目立つものが少なくない.形態検査における所見を示す用語は,疾患を場合分けし,複数の所見を組み合わせて病変の性状を推測し,鑑別疾患を絞り込むための鍵であり,かつ医療スタッフ間で診断の受け渡しをするために必要な共通用語でもある.画像診断における個々の所見用語が,病理組織所見と一対一の対応とはならないまでも,症例ごとに対応する所見を模索することが可能である.一方,対比のためには病理側への詳細所見の提供と,病理診断医がそれに対応するコメントを記載する努力が必要と思われる.腫瘤形成性病変における「形状」と「境界部」に関しては,病理組織像のシルエットと対比が可能で,最も重要と考えられる.形状は,病理所見として記載する習慣は乏しいが,特に良性疾患で癌との鑑別を要する場合には診断する際に強く意識している.針生検で観察される線維腺腫の分葉状構造や,放射状硬化性病変における不整形病変などがそれに相当する.境界部の性状については,浸潤性乳管癌の分類を行うために必須の所見で,波及度の判定にも関連がある.しかし,硬癌の大半は広義のもので癌の全周が浸潤性進展(境界不明瞭に相当)を示しているとは限らないこと,乳頭腺管癌のうち乳管内癌巣主体の浸潤癌例は,定義状浸潤巣の性状により組織型判定を変更しないので,その辺縁所見は一定ではないことなど,組織型ごとの病理像が必ずしも画一的ではないので,画像と病理を対比する際には注意すべきである.また,癌の広がり診断のために乳管内癌巣の先進部と非癌部を区別する際や良性の疾患においては,境界部の性状ということには,強く意識をせず診断を行っている.腫瘤非形成性病変における「乳管拡張」,「低エコー域」,「多発小嚢胞像」,「構築の乱れ」については,インターベンションの病理検査申込書で頻繁に目にする用語である.それぞれ,どのような病巣から採取された細胞,あるいは組織かをイメージすることができるため,病理観察を行った後の臨床病理相関・診断を行うためには必須の情報であるといえる.以上のように,乳房超音波診断の所見用語は,病理側にとっても大切なものではあるが,画像・病理双方の診断手法の発展や疾患概念の変遷に伴い,変化してゆく可能性もある.