Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション12 <教育に活かす> 百花繚乱! 乳房超音波検査用語

(S364)

不自然な乳房超音波用語

Strange Terminology in BreastUrtrasonography

佐久間 浩

Hiroshi SAKUMA

ソノグラファーズ超音波

Ultrasound, Sonographers Corporation

キーワード :

言葉というものは時代とともに変化してゆく.そして一つの言葉には様々な意味を持つこともあり,逆に一つの意味に対して多くの言葉が存在する.伝えたいことがキチンと伝わるのであれば,どういう表現をしようが自由であり,またそこにはその人のセンスが見え隠れする.ただし,学術用語の場合は,日々の生活の中で人々に使われながら変化していくというものよりは,どこかの段階で誰かが翻訳もしくは造語したものが多く,それらが踏襲されていくことが多い.ただし,それらがいずれも理解しやすく日本語として自然であるとは限らない.今回は乳房超音波領域で使われている用語のうち,不自然に思えるもの誤解を生みやすいと感じられたものを,拾い上げてみた.
1)「腫瘤像形成性病変」と「腫瘤像非形成性病変」極めて難解で回りくどい表現である.他臓器・他のモダリティで本用語を使うことはない.単に「腫瘤」と「非腫瘤性病変」としたほうが伝わりやすい.ただし,そうなったとしても「非腫瘤性病変」の使い方を誤ってはいけない.「非腫瘤性病変」は,その概念を頭に入れておけばよいもので,実際に報告書等に多用すると不自然になる.マンモグラフィにおいても石灰化病変に対して,「非腫瘤性病変を認める」とは言わないし,病理組織診断においても,明瞭な腫瘤を形成しない病変に対し「この病変は非腫瘤性病変である」という表現は用いないはずである.
2)「境界」と「辺縁」この2つの用語は定義がしっかりしているはずであるが,乳房超音波画像においては両者を厳密に区別できないからという理由で「境界部」としている.さらにこれらの所見としては「明瞭・不明瞭」と「平滑・粗ぞう」といった2つの観点があるが,これを「明瞭粗ぞう」とひとくくりに表現するのは不自然に思える.本来このような基本的な用語は,全ての臓器,全ての画像診断そして病理組織を含めた医学の現場で統一されるべきである.
3)内部エコーレベルの表現としての「極低」日本乳腺甲状腺超音波医学会(以下JABTS)のガイドラインには「極低」という表現があるが,これは日本語として極めて不自然な表現である.他の画像診断で「極高濃度」などと言うであろうか?そもそもこれらの所見を表現する際には「極めて低い」や「一見無エコーに見えるがわずかに内部エコーを認める」というように,各自が自分の言葉を用いて表現したほうが伝わりやすい.
4)「走査」と「操作」JABTSガイドラインおよび当会の医用超音波用語集には,探触子を移動させる行為に対し「操作」という漢字が用いられている.これは「走査」と表記すべきである.もちろん体表領域に限った用語として掲載されているが,全領域において超音波用語は統一されるべきであろう.