Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション1 <診療に活かす> 甲状腺濾胞性腫瘍の超音波診断

(S361)

内科医から見た濾胞性腫瘍診断

Diagnosis of follicular thyroid carcinoma based on ultrasound appearance

村上 司

Tsukasa MURAKAMI

野口病院内科

Department of Endocrinology, Noguchi Thyroid Clinic and Hospital Foundation

キーワード :

【はじめに】
甲状腺結節の鑑別診断には超音波検査と穿刺吸引細胞診が最も有用な検査法であるが,いずれを用いても濾胞癌の診断は困難なことが指摘されている.しかし実際には,甲状腺に結節のある患者さんを診る時にはまず超音波検査を行い,観察した結節の所見を甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準(超音波医学38: 667-670, 2011)に照らして判断するのが常である.そこで甲状腺濾胞癌と濾胞腺腫との鑑別におけるこの診断基準の有用性について検討した.
【対象】
2004年〜2012年の手術例のうち術前の超音波所見を確認できた224例を対象としてretrospectiveに検討した.切除標本の病理診断は濾胞腺腫 (FA群) 91例,微少浸潤型濾胞癌 (M-FC群) 70例,広汎浸潤型濾胞癌 (W-FC群) 63例であった.年齢は15〜87歳(中央値58歳),女性190例,男性34例で,年齢性別は3群間に有意差はなかった.腫瘍径は10〜68 mm(中央値25mm)でW-FC群が大きくFA群が小さい傾向であった.
【方法】
超音波診断基準の主所見である形状不整,境界不明瞭,内部低エコーレベル,内部エコー不均質と,副所見の高エコー有り,境界部低エコー帯不整または無しを悪性所見として3群間で比較検討した.統計解析にはJMP 8.0.2 (SAS Institute Inc., Cary, USA)を用いた.
【成績】
① FA群,M-FC群,W-FC群において形状不整である割合は各25.3%,51.4%,69.8%,内部エコー不均質である割合は各13.2%,38.6%,42.9%と,それぞれ有意差(P<0.0001)を認めた.境界不明瞭,内部低エコーの所見もその陽性率はFA群で低くW-FC群で高く,その差は有意(P=0.0005,P=0.0248)であった.副所見の高エコー有り,境界部低エコー帯不整または無しの所見についても同様にFA群で低くW-FC群で高く,その差は有意(P<0.0001)であった.② 主所見の4項目すべてを満たす腫瘍の93.8%が悪性であった.同様に3項目なら84.8%,2項目なら70.2%,1項目なら51.5%が悪性であった.主所見のいずれも認めない腫瘍では63.3%が良性であった.③ 主所見4項目についての多変量解析では形状不整,内部エコー不均質が有意(P=0.0003, P=0.0073)な所見であった.形状不整,内部エコー不均質のいずれかを満たす腫瘍を悪性と診断すると陽性適中率76.6%,感度71.4%,特異度68.1%であった.M-FC群に限ると感度57.1%,W-FC群では感度81.0%となった.
【結語】
濾胞腺腫と濾胞癌の間で甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準に示された各所見の陽性率に差があり,該当する主所見が多いほど濾胞癌の占める比率が高くなった.特に形状不整,内部エコー不均質は濾胞癌に有意に頻度の高い所見であった.濾胞性腫瘍の中で悪性をより疑うべき病変の選別に甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準は有用と思われた.