Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
パネルディスカッション1 <診療に活かす> 甲状腺濾胞性腫瘍の超音波診断

(S360)

濾胞性腫瘍のBモード像

Ultrasonographic features (B-mode) of follicular tumors of the thyroid

小林 薫, 宮内 昭

Kaoru KOBAYASHI, Akira MIYAUCHI

隈病院外科

Surgery, Kuma Hospital

キーワード :

【背景と目的】
濾胞癌(FC)の診断基準は手術後の病理組織において被膜浸潤,脈管侵襲の陽性(あるいは甲状腺外への転移)と規定されている.濾胞癌と濾胞腺腫(FA)の超音波所見と細胞診所見はかなり類似している.そのため術前においてFCとFAの鑑別診断はかなり困難であり,超音波検査でも細胞診においても「濾胞性腫瘍」という術前の診断としていることが多い.今回,FAとFCの手術前の超音波画像のBモード像による超音波診断について検討し,これを提示する.
【対象と方法】
隈病院,200510年までの6年間,初回治療,病理診断が確定したFC;184例とFA;347例の超音波画像を検討した.超音波機器:TOSHIBA, SSA-770A,探触子:PLT-805AT(5-8MHz),PLT-1204AX(7-14MHz).FCとFAの超音波診断(良性,境界,悪性)を検討し,さらに特別の所見(腫瘍塞栓,はみ出し(突出)像,頚部リンパ節転移,結節内結節)の存在を検討した.超音波診断は隈病院の5段階評価を用いた.
【結果】
術前の超音波診断はFCにおいては,良性26例,境界128例,悪性30例であった.(FCの超音波診断としては境界が多く,つぎに良性と悪性が同程度の症例数が存在した.)FAにおいては,良性105例,境界228例,悪性14例であった.(FAの超音波診断としては境界と良性が多く,悪性は少数であった.)特別の所見として,FCには腫瘍塞栓1例,はみ出し(突出)像13例,頚部リンパ節転移2例,結節内結節2例が存在した.FAにおいては特別の所見は観察されなかった.
【まとめ】
FAとFCの手術前の超音波画像を検討した.1.FAとFCのBモード画像は類似している 2.超音波診断:FCの一部に悪性側に偏りが存在する.3.FCには腫瘍塞栓,はみ出し(突出)像,頚部リンパ節転移,結節内結節が一部の症例に存在する.
【考察】
FAとFCの超音波のBモード像は両者とも,形状は整形,嚢胞成分の少ない充実性,境界は明瞭で平滑,内部低エコーレベルで均質,微細多発高エコーのない腫瘤を示すことが多い.したがってFAとFCは超音波画像において類似している.しかしながら,超音波診断を細かくみてゆくとFCはFAに比較して,一部に悪性側への偏りが存在する.その原因としてはFCにおいて形状が少し不整ででこぼこ型,境界が粗雑になる頻度がFAに比較して高くなる.さらにFCにおいては,特別の所見である腫瘍塞栓,はみ出し(突出)像,頚部リンパ節転移,結節内結節が一部の症例に出現することがある.
【結語】
FCとFAの術前のBモード像による超音波診断はかなり困難である.一部にFCを示唆する画像が存在する.現在のところ,「濾胞性腫瘍」という診断とこの一部の所見を注目すべきである.