Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 体表臓器
シンポジウム15 <治療に活かす> ソナゾイド®による乳腺造影超音波検査の臨床応用

(S357)

乳癌外科治療における造影超音波検査の有用性

Surgical usefulness of contrast-enhanced ultrasonography for breast cancers

加藤 久美子1, 太田 智行2, 中田 典生2, 神尾 麻紀子1, 野木 裕子1, 鳥海 弥寿雄1, 内田 賢1, 武山 浩1, 宮本 幸夫2

Kumiko KATO1, Tomoyuki OOTA2, Norio NAKATA2, Makiko KAMIO1, Hiroko NOGI1, Yasuo TORIUMI1, Ken UCHIDA1, Hiroshi TAKEYAMA1, Yukio MIYAMOTO2

1東京慈恵会医科大学外科学講座, 2東京慈恵会医科大学超音波診断センター

1Department of Surgery, The Jikei University School of Medicine, 2Department of Radiology Diagnostic Ultrasound Center, The Jikei University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
乳癌の外科治療において画像診断に求められるのは病変の存在部位の同定とその広がり診断およびリンパ節転移の有無の同定である.現在のところ乳癌の広がり診断には造影MRIが汎用され,その診断能は高い.しかし造影剤アレルギーや喘息症例など造影MRIの禁忌症例においては切除範囲の決定に苦渋することもある.また,超音波検査では描出されず造影MRIでのみ描出される病変においては切除範囲の決定が困難となる場合もある.現在までの知見では造影MRIで造影される病変はペルフルブタンを用いた造影超音波検査においても造影されうることが知られているが,造影超音波検査が乳癌の広がり診断に有用か否かはわかっていない.今回われわれは乳癌の広がり診断に対する造影超音波検査の有用性について検討したので報告する.
【対象】
平成24年9月から12月に造影超音波検査を施行した乳癌症例11例.病理組織学的内訳は浸潤性乳管癌8例,粘液癌2例,浸潤性小葉癌1例であった.いずれも造影MRIを併施した.浸潤性乳管癌の3例は術前化学療法を施行し,ほかの8例には初期治療として手術を施行した.
【方法】
造影超音波検査はソナゾイドを0.5ml/bodyを静脈内投与したのち,GE healthcare社製LOGIQ E9を用いてAmpulitude Modulation法で行った.Bモードで病変を観察したのち,造影剤を投与し周囲正常乳腺を含めて病変全体をmanualでスイープして約50秒間観察した.初期治療として手術を施行した8症例に対しては造影超音波検査で同定した病変の広がりを造影MRIおよび切除標本で得られた病理組織学的所見との対比を行った.術前化学療法を施行した3症例に対しては造影MRIとの対比を行った.
【結果】
11例中9例では造影超音波検査および造影MRIでの病変の広がり診断に差を認めなかった.この9例のうち7例では初期治療として手術を施行し,断端陰性が確保されていた.広がり診断に乖離を認めた2例のうち1例は術前化学療法を施行した症例で,造影MRIでは周囲に複数の乳管内進展を伴うことが推定されたが造影超音波検査ではこれらの乳管内進展像は同定されなかった.この症例には術前化学療法を施行したため,切除標本の病理組織学的所見と治療前画像所見との対比が不可能である.ほかの1例は34歳女性で,造影MRIでは周囲に広範な乳管内進展を伴う右乳腺A領域を中心とする浸潤性乳癌と診断した.一方造影超音波検査では病変は約2cm限局した浸潤性乳管癌で,その周囲には異常な造影域を認めなかった.手術標本では造影超音波検査に一致した広がりを有する乳癌で,背景乳腺は年齢相応の豊富な小葉構造を持つ正常乳腺であった.
【まとめ】
今回の検討した11症例のうち9例では造影MRIとの乖離を認めず造影超音波検査が切除範囲の決定に応用可能であることが示唆された.造影MRIとの乖離を認めた症例では造影超音波検査が真の病態を反映していたと考えられるが,結論するには症例の積み重ねが必要である.