Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
パネルディスカッション3 <科学に活かす> 超音波を用いた腎・泌尿器領域の各臓器血流測定とその意義

(S344)

陰茎海綿体血流と勃起機能

Color duplex Doppler Ultrasonography for functional assessment of erectile function

久末 伸一, 堀江 重郎

Shin-ichi HISASUE, Shigeo HORIE

帝京大学医学部泌尿器科

Urology, Teikyo University, School of Medicine

キーワード :

勃起能評価はここ10数年で,大きく変化した.そのきっかけは極めて有効な経口治療薬であるPDE5阻害薬(PDE5i)が登場したことである.PDE5iの登場以前は心因性勃起障害(心因性ED)と器質性勃起障害(器質性ED)の鑑別が極めて重要とされていた.PDE5i以前の治療はいずれも侵襲的であことから,心因性EDの除外が必須であった.また,血行再建も考慮に入れることも多かったため,陰茎海綿体における簡便な検査が必要とされた.カラードップラー超音波検査(Color duplex Doppler ultrasonography; CDDU)による海綿体動脈の評価はLueらが1985年に初めて紹介した.本検査は海綿体動脈の血流を収縮期最大血流速度(Peak systolic velocity;PSV)で評価するものである.また,勃起の維持には勃起時の流出静脈の閉塞が極めて重要となってくる.本検査では拡張終末期血流速度(End-diastolic velocity; EDV)を測定し,抵抗係数(Resistive index; RI)を算出することで,静脈溢流の評価が可能である.このようにCDDUは勃起にかかわる海綿体血管系の評価に有用であるとされる.本検査の問題点としては,通常はPGE1の海綿体内注射やPDE5iの内服などによる勃起誘発を必要とすることが挙げられる.そのため,性機能外来においてもルーチンに行われる検査ではなくなってきている.PDE5iは血管性EDに対しても80%の有効率を有する有用な治療法である.このことから,血管系の評価は必須ではなくなり,勃起能評価はInternational Index of Erectile Function (IIEF)やSexual Health Inventory for Men (SHIM)などの質問紙で行われるようになった.これまでに,古典的なCDDU検査と現代の質問紙における評価の関連についての検討はほとんどなされていない.そこで,今回我々は当院のメンズヘルス外来を受診したED患者においてCDDUを施行し,SHIMとErection Hardness Score(EHS)による主観的勃起能と,エレクトメーターによる夜間睡眠時勃起による客観的勃起能,またPGE1海綿体テストとの相関関係について検討を行った.対象は2011年4月から2012年12月まで帝京大学医学部付属病院泌尿器科メンズヘルス外来にEDを主訴に受診し,検査の同意が得られた患者35名である.年齢中央値は64歳(範囲16歳1-76歳),BMI中央値24.3kg/m2(範囲19.8-34.1),SHIM平均値6.12±0.64,EHS平均値1.471±0.097,fT 7.809±0.438,LH6.118±0.813,PSV42.7±2.8,EDV 9.2±0.9,RI 0.78±0.02であった.単回帰分析においてPSVと年齢,BMI,高血圧,糖尿病,高脂血症,遊離テストステロン値に相関は認めなかったが,RIと年齢に負の相関を認めた(p=0.042,R=-0.346).主観的勃起能評価(SHIM,EHS)および客観的勃起能評価(エレクトメーターによる夜間睡眠時陰茎周変化)を変数としてPSV, RIの重回帰分析を行ったところ,有意な予測因子は認めなかった.今回の検討ではCDDUにおけるPSV, RIは主観的,客観的ED重症度との相関は認めなかった.CDDUは海綿体動脈における流速の評価に有用と考えられる.しかし,PDE5i時代における血管性EDの診断においては陰茎海綿体の微小血流の評価を可能とする新しい評価方法が求められるものと考えられた.