Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 腎泌尿器
パネルディスカッション3 <科学に活かす> 超音波を用いた腎・泌尿器領域の各臓器血流測定とその意義

(S343)

腎血流イメージングと腎機能

Renal blood flow imaging and renal function

山本 徳則

Tokunori YAMAMOTO

名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科

Associate Prof., Urology

キーワード :

腎臓は生体臓器のVital organのうちに最も血管密度が高く,毛細血管レベルの微小循環は腎臓のあらゆる疾患の原因またはその結果として深く関わっている.以前より,我々の教室は,腹腔鏡または内視鏡技術を応用した腎臓拡大内視鏡を世界に先駆けて開発し毛細血管レベルの腎微小循環を直接リアルタイムで観察している.その機能を尿細管周囲毛細血管イメージング連続画像からプラズマポケットをトレサーとした,時空間画像処理法を考案し,腎移植の 血管吻合直後の尿細管周囲毛細血管と経時的な赤血球速度を測定している (Hattori R, Yamamoto T et al Transplantaion 2001).また,この腎微小循環傷害を反映する尿中バイオマーカL型脂肪酸結合蛋白を開発し,昨年度保険収載にもなっている(Yamamoto T et al JASN 2001)しかしながら,腎拡大内視鏡を用いる検査は手術により腎臓表面を直視下に腎臓微小循環にアクセスしなければならない.さらにこの尿中バイオマーカは無尿時期には評価できない.そこで今回無尿期でもベットサイド行える腎微小循環を反映する超音波造影剤(ソナゾイド)を用いた腎微小循環イメージングンから腎機能を評価する方法を考案したので報告する.移植腎機能評価は定期的な血液検査,ならびに外来で可能な画像検査が必要である.現在は,術後早期では,1から2週目ごとの血液検査を施行している.画像検査として,最も簡便なカラードプラーを含めた超音波検査を多用している.これらの検査で,拒絶反応が疑われる時には,入院の上で移植腎生検が必要となる.腎臓移植は末期腎不全の最終的最良の治療法である.しかし,腎提供者の不足から腎移植は一般的な治療法とはなっていないのが現状である.この少ない腎移植症例を1日でも長く生着させることが,今最も必要とされることであり,そのためには術前術後の画像診断をはじめとした種々の検査で,早期に移植腎の状態を把握する必要がある.しかしながら移植腎の血流を評価するカラードドプラー検査の感度では,機能を反映する腎微小循環を十分評価することは困難と考える.中でも,臨床において,特に腎臓虚血を反映する髄質外層を反映する機能の評価は有用性安全性の面から検討はなされなかった献腎症例(n=6)と生体腎症例(n=6)を対象に造影超音波検査で造影剤直後の腎微小循環イメージングを連続画像として保存する.解析時,関心領域を葉間動脈,髄質外層に設定し造影剤注入直後の濃度,時間曲線からその造影剤通過時間(Ti,m)を測定し腎機能(graft function:初尿時間,血中Crn,腎シンチ検査)と比較検討する.献腎移植直後ではTi-mは17秒前後であったのが1週間を過ぎると通過時間低下し,透析離脱後は横ばいとなる.一方生体腎,移植直後から10秒以内でその後の改善はわずかという結果であった.すでに通過時間が10秒以内であれば透析離脱,初尿発現期間との関連につての着眼が可能で,症例を追加検討することによって,初尿が出ていない時期の腎機能に影響を及ぼさない腎微循環を反映する新しい評価方法の検討を行うには十分な予備的結果を有している.腎移植後の急性尿細管壊死による虚血は髄質機能と密接な関連がありその虚血状態は初尿を遅らせる.非侵襲的に繰り返し行えるこの方法を初尿が出ていない急性尿細管壊死症例に応用し,draft functionを評価することは有用であることが示唆された.超音波造影剤を用いた腎微小循環血流イメージングから腎機能を測定するアプローチは,感度が高く,無尿,腎機能のハイリスク症例に対してもベットサイドで行える超音波検査の特徴を生かした有用な方法であると考える.