Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
産婦人科ライブ 胎児中期スクリーニング

(S332)

妊娠中期における胎児心臓スクリーニング

Fetal heart screening in the mid-pregnancy

稲村 昇

Noboru INAMURA

大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科

Pediatric Cardiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【はじめに】
妊娠中期における胎児心臓スクリーニング方法は正常心臓から正常でないものを識別する方法である.このためスクリーニング項目が多くなり,判別基準も曖昧である.先天性心疾患(CHD)には新生児期に悪化するものがあり,このようなCHDを直接選別できれば効率の良いスクリーニングが期待できる.
【対象】
対象は新生児入院の要する体表的CHDであるファロー四徴(TOF),大動脈縮窄・離断(CoA),大血管転位(TGA),総肺静脈還流異常(TAPVC)である.これらの胎児心エコー検査を正常胎児(NF)と比較し,スクリーニングの基準となる指標を検討した.
【方法】
1. (図A)心臓軸をTOFとNFで比較した.2. (図B)Three vessel view で大動脈(Ao)/肺動脈(PA) (Ao/PA)をCoA, TOF, NFで比較した.3. (図C)TGA: TGAはAoとPAが交叉せず上下平行走行するため,three vessel trachea viewはNFに見られるV-shapeではなくAoが前後方向に1本となるI-shapeを呈する(図C).この I-shape signの検出をTGAとNFで比較した.4. (図D)TAPVC:四腔断面での左房-大動脈距離(LA-Ao)/下行大動脈径(Ao)をTAPVCとNFで比較した.
【結果】
1.心臓軸>45°の症例をTOFの69%, NFの 6%に認めた.TOFスクリーニングでの心臓軸>45°の感度は69%,特異度84%であった.2. Ao/PAはTOF:1.59±0.26, CoA:0.51±0.10, NF:AO/PA:0.84±0.12であった.ROC曲線からのカットオフ値はTOFとNFはAO/PA 1.2,CoAとNFはAO/PA 0.7であった.3. 胎児心エコー検査1134例を再生し,I-shape signの有無を調べた.1134例中CHDは671例(59.1%),そのうち31例がTGAである.I-shape signはTGAの30/31(96.7%),他のCHD31例(4.8%)で確認し,いずれも重症CHDであった.NFではI-shape sign は検出されなかった.I-shape signのTGA検出に関する感度は96.7%,特異度97.1%であった.4. LA-dAo/dAoは,正常例で0.74±0.23に対し,TAPVCで1.65±0.37と有意に高値であった(p=0.0002).カットオフ値は1.3であった.
【結論】
心臓軸>45°, 0.7>AO/PA, AO/PA >1.2, I-shape signの検出,LA-dAo/dAo>1.3をスクリーニングに組み入れると効率の良いスクリーニングが可能である.