Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション20 <診療に活かす> 胎児精査の極意

(S329)

胎児四肢長管骨短縮をみとめるときの精査のすすめかた

A detailled ultrasound examination of fetal abnormalities with shortened femur length

室月 淳1, 2

Jun MUROTSUKI1, 2

1宮城県立こども病院産科, 2東北大学大学院医学系研究科先進発達医学講座胎児医学分野

1Department of Maternal and Fetal Medicine, Miyagi Children’s Hospital, 2Departmet of Fetal and Developmental Medicine, Tohoku University Graduate School of Medicine

キーワード :

胎児CTは胎児骨系統疾患の診断の強力なツールであり,X線診断学の過去の知見を応用することで大部分の疾患の診断が可能となる.しかし周知のとおり胎児被曝のリスクがあるため,胎児CTはあくまでも確定診断目的とすべきであり,決してスクリーニングに用いてはならない.そのために胎児骨系統疾患に対して超音波検査でどこまで診断可能かをきわめる必要がある.妊婦健診時には大腿骨長(FL)がルーティンに計測されるため,FLの短縮がスクリーニングされることはめずらしくない.短縮の程度は平均値からのSDで評価し,-3〜-4SD以下のときに有意なFL短縮と判断する.FLをはじめ長管骨が-3-〜4SD以下を呈するときは,骨系統疾患,胎児発育遅延(FGR),染色体異常(21トリソミーが多い)の3つのケースが考えられる.-5〜-6SD以下ではほぼ骨系統疾患と考えて間違いがない.-4SD前後では,achondroplasia (ACH),hypochondroplasia,spondyloepiphyseal dysplasia (SEDC)といった比較的軽症の疾患が考えられる.ACHやSEDCでは頭囲は必ず正常よりも大きくなることに注意する.例外として,campomelic dysplasiaやosteogenesis imperfectaの軽症型のFLは平均よりもわずかな短縮にとどまることが多いため,長管骨の長さだけでなく彎曲や骨折の有無に注意する必要がある.FGRではいわゆるsymmetricalやasymmetricalのタイプにかかわらずFLが短縮することが多く,重症型では妊娠24週以前からFLののびが遅延して最終的には-4SD前後を示すことがある.超音波所見上は骨系統疾患に似かよってみえるため“FGR mimicking skeletal dysplasia”とよばれることもある.FGRでは,典型的なasymmetrical typeであっても大横径(BPD)が平均より大きいことはないのが,ACHやSEDCとの違いである.21トリソミーで著明なFL短縮を認めるのはしばしばあり,やはりACHとの鑑別に苦慮することがある.21トリソミーのFL短縮はACHよりやや軽度の傾向がある.ACHのFL短縮が明らかになるのは妊娠22-24週であるが,妊娠後期になると-4〜-5SD以下となるのに対し,21トリソミーでは-4SDを下まわることはほとんどない.また21トリソミーを示唆する心奇形や内臓奇形の有無,あるいは近位肢節有意の短縮や大腿骨の軽度彎曲,三尖手といったACH特有の所見の有無を丹念にみていくことが必要である.骨系統疾患の個別の診断については,超音波でていねいに観察し,疾患に特有の所見の積み重ねでみていくことになる.長管骨の所見では長さのほかに,骨折,彎曲,骨化不良,骨幹端の変化,異常石灰化などの有無に注意する.長管骨以外の骨の観察としては,頭部の形と骨化の程度(クローバー葉頭蓋,骨化不全,頭囲の拡大など),顔面(前頭部突出,鼻根部陥凹,下顎突出など),胸郭所見(極端に小さい場合,長くて狭い場合,肋骨が極端に短い場合,肋骨に多数の骨折と変形を認める場合などにそれぞれ個別の疾患が対応)などが重要である.腹囲やFLといった計測値をもとにした予後推定のための指標が複数報告されているが例外はきわめて多い.こういった指標はあくまでも参考にとどめ,個々の症例にたいして診断の個別化をきちんと行って予後推定を行うべきである.そのためにも骨系統疾患に対するレベルの高い超音波診断が求められている.