Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション20 <診療に活かす> 胎児精査の極意

(S328)

胎児頭部 (中枢神経系)

Fetal Head (Central Nervous System)

夫 律子

Ritsuko POOH

クリフム夫律子マタニティクリニック臨床胎児医学研究所出生前診断部門

Prenatal Diagnosis Unit, CRIFM Clinical Research Institute of Fetal Medicine PMC

キーワード :

【目的】
胎児頭部の診断検査をするためには超音波検査の利点を最大限に活かして,いかに客観的にInformativeな画像が決め手となるため,描出方法と診断方法について具体的に提示する.
【対象】
スクリーニングで胎児頭部になんらかの異常が疑われる症例
【描出方法】
第一段階は経腹超音波法でBPDなどを計測する水平断面である.この水平断の平行断面で,頭蓋の形,脳室の形,小脳形態などを確認する.この断面だけで背部を診ずして開放性の二分脊椎のほとんどの例は診断がつく.第二段階は大泉門エコーであるが,胎児の正確なプロファイル(横顔)を正中矢状断面で描出し,そのままプローブを胎児前額上部に移動することで大泉門からの矢状断面での脳描出ができる.90度プローブを捻ると冠状断面で観察できる.この方法は骨盤位や横位の胎児では容易である.妊娠25-6週位までであれば,頭位胎児でもプローブで母体恥骨側から上方に頭部を押し上げると胎児が浮遊して大泉門エコーができる.第三段階は頭位胎児の経腟超音波法による脳観察である.極めて明瞭画像が得られるが,画像を見ながらプローブを持たない手で胎児頭部を母体の左右どちらかから少し押して頭部を最適場所に移動させることが必要になることが多い.
【診断方法】
頭蓋,脳室,小脳の形態からキアリ奇形の疑いが強い場合には脊椎の詳細観察をして脊髄髄膜瘤などの正確な診断をする.脳室が拡大している場合は,第三脳室・第四脳室の拡大があるかないかを矢状断面,冠状断面で診断することにより非交通性脳室拡大の原因箇所を推測できる.また,拡大脳室壁が高輝度で不整なラインであれば脳室内出血(多くは脳出血の脳室内穿破)の診断がつく.頭蓋内に嚢胞や腫瘍などの占拠病変がある場合には,脳の中なのか脳の外側なのかのオリエンテーションをつけるために上述したような正確な矢状・冠状断面の描出が必要になる.上級編として,脳発達の遅延はシルビウス裂や脳回形成を診ることで神経細胞移動障害などの診断が可能である.さらに筆者の施設では脳内微小血管発達を診ることで神経学的な予後予測との関連について研究している.また,顔面,四肢(拇指位置など)の観察も診断補助となる.
【結論】
上記のような詳細超音波法を行っても脳幹発育などの診断は難しい.超音波検査以外の画像診断との組み合わせ,また脳構造は妊娠経過と共に変化していくことも多いため経時的な観察が必要である.