Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション20 <診療に活かす> 胎児精査の極意

(S328)

超音波検査における胎児胸部の詳しい見方

The knack to investigate the fetal chest using ultrasonography

青木 昭和

Showa AOKI

島根大学医学部産科婦人科

Obstetrics and Gynecology, Shimane Unoversity Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
胎児胸郭内臓器は心臓以外にも肺,気管・気管支,食道,胸腺,胸膜,心外膜などがあり,その病態も様々である.特に胸部は肺や心臓・大血管は生命維持に重要な臓器でありわずかな低形成や狭窄・閉鎖でも,生後の予後に重大な影響を及ぼすこともある.一方,胸部の超音波検査では,胸骨・肋骨,肩甲骨,さらに上肢の骨により超音波ビームが遮られることが多く,腹部に比べ描出しにくい.さらに大血管や気道が複雑に入り組んでいるため,各臓器の同定には,解剖学的知識に基づいた位置関係からみた理想的な断面の設定が必要となる.
【目的】
超音波診断装置を用いた胎児胸腔内臓器の描出率の検討,および病的状態の評価を目的とした.
【対象・方法】
先天性横隔膜ヘルニア(CDH),先天性肺嚢胞性腺腫様奇形(CCAM),肺分画症(BPS),さらに胎児胸水,心嚢液疾患を対象とし,描出上の工夫,画像の特徴について検討した.また正常胎児において気管・気管支の描出法を検討し描出率を求め(112例),その内径を計測し(50例),異常症例(CDH,CCAM,肺低形成,総動脈幹症,気管無形成)における気道の変化についても検討した.更に食道については,正常胎児(68例)にて解剖学的に食道の位置を推定し,その超音波画像上の特徴とその描出率を求め,異常例の観察も行った.最後に気管と食道の同時描出可能な断面,更に大動脈弓と気管・気管支・食道が連続して観察できる冠状断面について検討した.
【結果】
CDH, CCAM, BPSなどの観察では胸部横断面に加え,矢状断面の描出が有用であった.1例で左内胸動脈由来のBPSを経験し,CDHを合併しており急速にヘルニアが進行したが予後は良好であった.1例で胸腔内に多量のfluid貯留を認め,肺は後方に圧迫され,エコーフリースペースは心臓前方で連続していることから心嚢液と判断できた.気管・気管支(左右)は,妊娠22週以降,描出が可能であり,26週以降の気道内径の正常参考値が得られた.左CDHでは気管・右気管支が確認できたが,左気管支は分岐部の先で急な狭窄傾向を認めた.右CCAM例(macrocystic)では気管・左右気管支が明瞭に認められ,特に右気管支も肺門部まで描出し得た.羊水過少による両側肺低形成例では左右の気管支が描出できなかった.総動脈幹症では気管にやや圧迫所見は認めたが狭窄はなく,気管無形成例では気管の描出は困難であったが左右気管支は細いながら確認できた.食道は短軸像では2〜3個の高輝度点状エコー像として描出され,長軸像は,3本の高輝度線状エコー像が密に重なり合った像として妊娠19週から40週で描出可能であった.嚥下運動は 16%に認められた.食道閉鎖症では食道の途絶と閉鎖部より口側の食道拡張が観察された.空腸閉鎖症では持続する著明な拡張を認めた.食道・気管の同時描出は,大動脈アーチ断面をやや右側に傾けるだけで,81.2%で可能であり,胎向としては大動脈アーチ断面のよく描出される第2頭位の方が容易であった.また,大動脈・気道・食道を連続して観察する方法としては,下行大動脈を含む胸部冠状断面を徐々に前方に移動させる方法があり,横行大動脈・動脈管合流部(Y字型)と気管・気管支・食道が連続して容易に観察できた.
【結論】
胎児胸郭内臓器は複雑な位置関係にあり,さらに描出しにくい場合もあることから評価が難しいと思われているが,適切な描出断面を見出すことにより,格段に描出率の向上が得られ詳細な評価につながると思われた.