Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション18 <治療に活かす> 胎児治療の次のステップ:治療適応・術後管理に超音波をどのように応用していくか

(S325)

胎児頻脈性不整脈胎児診断・治療における超音波の役割

Fetal tachyarrhythmiaThe role of echocardiography in prenatal diagnosis and treatment

稲村 昇

Noboru INAMURA

大阪府立母子保健総合医療センター小児循環器科

Pediatric Cardiology, Osaka Medical Center and Research Institute for Maternal and Child Health

キーワード :

【はじめに】
胎児頻脈性不整脈に対する胎児治療の有効性はこれまで多く報告されている.本邦でもプロトコール治療による前方視的研究が行われている.当センターでの胎児頻脈性不整脈への胎児治療を後方視的に検討し,超音波検査の有用性を検証する.
【対象】
当センターで経験した胎児頻脈性不整脈20例.紹介時妊娠週数は21〜39週(中央値34週),胎児治療は10例で行った.
【胎児診断】
胎児心拍180以上が胎児心拍モニタリングで40分あるいは50%以上に認められたものを頻脈性不整脈とした.頻脈性不整脈はM-mode法で上室性頻脈(SVT),心室性頻脈(VT)に分類した(図A,B).SVTはDoppler法でWPW症候群に代表される側副路をもつ房室リエントリーであるshortVA SVT (図C)と異所性心房頻拍,房室接合部性頻拍で代表されるlongVA SVT (図D),心房内マクロリエントリーによる頻拍発作である心房粗動(AF) (図A)に分類した.20例中,VTが3例 SVTが17例であった.VTの3例は2例がQT延長,1例はSSA陽性の完全房室ブロックであった.SVTの17例は10例がAF, shortVAが4例,longVAが3例であった.
【胎児治療】
AFはdigoxin,shortVAはdigoxinかflecainaide,longVAはstalolかflecainaideの内服を選択した.
【治療効果】
VTの1例にflecainaideの内服でVTの頻度が減り自然分娩に至った.AFの10例中6例が診断翌日に自然軽快し,1例は満期であったので出生後治療(DC)とし,残る3例で胎児治療を行った.胎児治療はdigoxinの内服を行い,2例で有効,1例は無効で娩出後治療(DC)を選択した.全例後遺症なく生存している.shortVAの4例は2例にDigoxin,2例にflecainaideの内服を行った.Ebsteinを合併した1例はflecainaideで無効のため娩出後治療を選択した.Ebstein以外の3例は有効で後遺症なく生存している.longVAの3例は1例が自然軽快し,残り2例にflecainideとstalolの内服を行い有効であった.1例は後遺症なく生存したが胎児水腫と心機能低下を伴った1例は回復後も心機能低下が持続し,心筋症と診断,遠隔死亡した.
【まとめ】
1.胎児頻脈性不整脈の診断に超音波検査は有効であった.特に,Doppler法による診断でより詳細に分類できた.2.不整脈を分類し,治療法を選択することは有効な方法であった.3.不整脈以外の合併症(心奇形,心筋症)を有すると予後不良である.