Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション18 <治療に活かす> 胎児治療の次のステップ:治療適応・術後管理に超音波をどのように応用していくか

(S324)

胎児胸腔-羊水腔シャント術前後における超音波所見の概要

Summary of ultrasonographic findings before and after thoracoamniotic shunting for fetal pleural effusions

高橋 雄一郎

Yuichiro TAKAHASHI

国立病院機構長良医療センター産科

fetal-maternal medicine, national organization, NAGARA medical center

キーワード :

【目的】
近年,胎児の重症の原発性乳ビ胸に対しては,胸腔-羊水腔シャント術(TAS)による胎児治療が行われる.厚生労働科学研究左合班による多施設共同,前方視試験により,シャントチューブの安全性,有効性が確認試され1)-2),薬事承認に引き続いて,2012年7月より保険収載されるなど,TASによる胎児治療は新しいステージに入った.しかし,胸水例をすべて救える訳ではなく,本治療は更なる発展が望まれている.また前方視的な超音波所見の検討の報告はなく,その解析の意義は高い.そこで今回,本試験で得られた,詳細を検討したので報告する.
【試験 対象と方法】
妊娠18週から33週6日の単胎で [1]片側または両側の大量胸水で胎児胸水穿刺吸引後7日以内に再貯留を来した(胎児水腫の有無は問わない)[2]除外項目;重篤な形態異常,不整脈,頭蓋内石灰化,貧血,重篤な染色体異常,血液型不適合,Mirror症候群,妊娠高血圧症候群,重症切迫早産例は除いた.
【総合的な臨床成績】
総生存率19 / 24 (79.2% 5施設2年間) 胎児水腫例12 / 17 (70.6%)という結果を得た.5例の新生児死亡例を解析してみると31,32週施行例で胎児水腫の改善がなかった2例,胎児期効果は得られたものの,生後PPHNが高度で肺低形成が疑われ死亡した2例が存在した.全体としてはKlippel-weber 2例,同胞が先天性筋繊維タイプ不均等症であった予後不良な一例,染色体異常2例を含んでいた.
【今回の検討方法】
超音波検査は発育評価,羊水量評価,構造異常の有無に加えて,術前,術後ともに胸水深度,胸水面積,肺面積,胸郭面積,CTAR,浮腫の有無を中心に形態学的に評価を行った.また胎児血流計測(臍帯動脈,静脈管,PLI)による循環機能評価も行った.検討は記述統計,student t testにより解析し,P<0.05を有意差有りとした.
【おもな結果】
最大胸水深度(左右総和)は術前 VS 術後一日目にて それぞれ28.6(9.8) VS 17.9(9.8)(MEAN(SD)),p<0.001と有意に胸水量の減少を示している.またそれに伴い,CTAR 18.1(4.0) VS 23.15 (5.1),p<0.001と有意に心臓が大きくなっていることが分かり,胎児所見の改善が確認された.また血流計測では術前は,UAEDV 2/24(8%)DV逆流 0/24(0%),PLI 0.35 ( 0.17 1.2 )をしめしたが,異常血流所見は術後ほぼ改善した.
【結論】
今回,胎児胸水症例の胎児治療前後での超音波所見を提示した.今後,これらの所見を基礎として,胎児治療の効果判定などの検討を行っていきたい.しかし,諸所見が改善しても最終的に救命に到らない症例も存在していた.予後規定因子としての新しい超音波所見の検討が必要であり,また有効な対象を選択するという意味で,合併疾患などの更なる出生前診断の向上が重要であると考えられる.
【参考文献】
1)Takahashi Y, Kawabata I, Sumie M, Nakata M, Ishii K, Murakoshi T, Katsuragi S, Ikeda T, Saito M, Kawamoto H, Hayashi S, Sago H. Thoracoamniotic shunting for fetal pleural effusions using a double-basket shunt. Prenat Diagn. 2012;32:1282-7.
2)高橋 雄一郎,川鰭 市郎,左合 治彦;重症胎児胸水に対する胸腔 羊水腔シャント術の治療効果と安全性に関する臨床使用確認試験の概要:産婦人科の実際61;1519-1525.2012.