Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション4 <診療に活かす> 印象に残る症例:百聞は一見にしかず

(S322)

大血管転位症−修正大血管転位症を反復した1症例

A case of repeated TGA and C-TGA

宮崎 純1, 関谷 隆夫2, 大脇 晶子1, 石井 梨沙1, 宮村 浩徳1, 南 元人1, 西澤 春紀1, 藤井 多久磨1

Jun MIYAZAKI1, Takao SEKIYA2, Akiko OHWAKI1, Risa ISHII1, Hironori MIYAMURA1, Yukito MINAMI1, Haruki NISHIZAWA1, Takuma FUJII1

1藤田保健衛生大学産婦人科, 2藤田保健衛生大学周産期医学

1Obstetrics and Gynecology, Fujita Health University, 2Perinatal Medicine, Fujita Health University

キーワード :

【緒言】
今回我々は,流産後の2回目の妊娠で大血管転位症,3回目の妊娠で修正大血管転位症と,同じタイプの先天性心疾患を反復した1症例を経験した.
【症例】
29歳1回経妊1回経産(初期流産).既往歴は,B型肝炎にて消化器内科にて管理中.2回目の妊娠:無月経にて初診となり,妊娠診断後,近医での妊娠管理とし,妊娠35週での再来を指示した.妊娠35週0日に再紹介となり,胎児超音波検査にてTGAを疑って精査待ちのところ,妊娠36週2日に陣痛発来した.緊急精査にてTGAと診断し,高次機関への緊急母体搬送となった.搬送先にて小児循環器科による適切な介入が行われたが,児は出生後に死亡した.3回目の妊娠:前医にて妊娠管理後,妊娠24週時にB型肝炎合併妊娠の為に紹介受診.胎児超音波検査で,大動脈・肺動脈は平行に走行,四腔断面で右側に右房・左室,左側に左房・右室,流出路断面で左室より肺動脈,右室より大動脈が流出,心室中隔欠損+,肺静脈は左房に流入,卵円孔あり,動脈管あり,修正大血管転位・心室中隔欠損と診断した.小児科との検討により,出生早期での急変の可能性は低いと判断し,当院での管理とした.妊娠37週6日,自然経腟分娩となった.児は,出生体重2965g,女児,AS 8/9点,臍帯血 pH: 7.328で,当院NICU管理とした.母体は日齢4日に退院し,児は小児心臓手術体制が整備された施設へ紹介した.
【考察】
大血管転位症は,出生後早期から急変し,BAS等の介入が必要となるが,修正大血管転位ではその必要がなく,適切な周産期管理施設の選択には正確な出生前診断が必要である.2回目の妊娠では大血管転位症との出生前診断にて,高次施設への母体搬送となったが,3回目の妊娠では,一見正常に見える四腔断面像による房室弁と心室の形態から修正大血管転換症の診断に至り,当施設での分娩が可能であった.当施設のように,小児心臓血管外科がない施設では,個々の症例の疾患の重症度に合わせて,対応可能な施設へ適切に紹介する必要となるのが問題点である.これに対応する為には,産科による系統的胎児心エコースクリーニングと,関係各科による2次精密検査により,出生直後に重篤な状態となり得る先天的心疾患の正確な出生前診断体制を構築し,診断精度を維持することが肝要と考えられる.
【結語】
限られた地域周産期医療体制の中で,先天性心疾患を有する児の予後を向上させ,安全かつ効率的な医療を提供する為には,小児心臓血管外科体制の構築に加えて,出生前診断の技術と体制の整備が必要である.