Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
パネルディスカッション4 <診療に活かす> 印象に残る症例:百聞は一見にしかず

(S321)

臍帯動脈血栓症が疑われた胎児発育不全の一例

A Case of Fetal Growth Restriction with Umbilical Artery Thrombosis suspected

田中 啓, 谷垣 伸治, 片山 素子, 松島 実穂, 宮崎 典子, 橋本 玲子, 岩下 光利

Kei TANAKA, Shinji TANIGAKI, Motoko KATAYAMA, Miho MATSUSHIMA, Noriko MIYAZAKI, Reiko HASHIMOTO, Mitsutoshi IWASHITA

杏林大学産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Kyorin University

キーワード :

【緒言】
臍帯血管の血栓症は極めて稀であり,そのうち臍帯動脈血栓症の占める割合はさらに小さく,その周産期予後は不良とされている.今回,我々は出生前に経腹超音波断層法にて臍帯動脈血栓症が疑われた胎児発育不全の症例を経験したので報告する.
【症例】
30歳,中国国籍,1経妊1経産(3300g,正常経腟分娩)自然妊娠成立後,妊娠31週に妊娠糖尿病と診断された.妊娠35週に経腹超音波断層法にて胎児発育不全および臍帯動脈を2本確認できないため当科へ紹介.経腹超音波断層法では,推定児体重2013g(6%タイル),臍帯横断面で静脈および動脈が1本ずつとそれらの血管の間隙に小エコー像を確認した.臍帯以外に胎児に明らかな構造異常は指摘できなかった.カラードプラー法で膀胱の右側にのみ臍帯血管が走行した.右臍帯動脈,中大脳動脈,静脈管,大動脈峡部の血流波形に異常は認められなかった.超音波所見からは臍帯動脈の血栓症または閉塞が考えられた.妊娠36週2日胎児機能不全の適応で緊急帝王切開にて分娩となり,新生児は2142g,Apgスコア9/9点で,出生後経過は良好であった.臍帯は全長61cm,捻転が強く,組織学的には動脈2本,静脈1本が確認されたが,血栓形成は認められなかった.胎盤はうっ血の強い部領域と貧血調の領域が混在しており,絨毛膜部血管壁に壁内血栓・石灰化を認めた.術後の精査にて母体に血栓性素因は認められなかった.
【結語】
特徴的な超音波所見から臍帯動脈血栓症または閉塞が疑われた胎児発育不全症例を経験した.病理学的には血栓は確認できなかったが,単一臍帯動脈ではなかった.報告例と同様に胎児発育不全に合併しており,同疾患では臍帯の検索も重要であると考えられた.
【参考文献】
Klaritsch P. Spontaneous Intrauterinne Umbilical Artery Thrombosis Leading to Severe Fetal Growth Restriction. Placenta 2008;29:374-377