Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム6 <科学に活かす> 超音波の新技術・ソフトウェアを使いこなす

(S313)

Velocity vector imagingを用いた胎児心室壁運動解析の試み

The characterization of myocardial performance during the fetal development using velocity vector imaging

宮越 敬1, 金 善惠1, 2, 春日 義史1, 池ノ上 学1, 門平 育子1, 松本 直1, 峰岸 一宏1, 吉村 泰典1

Kei MIYAKOSHI1, Seon-hye KIM1, 2, Yoshifumi KASUGA1, Satoru IKENOUE1, Ikuko KADOHIRA1, Tadashi MATSUMOTO1, Kazuhiro MINEGISHI1, Yasunori YOSHIMURA1

1慶應義塾大学医学部産婦人科, 2川崎市立川崎病院産婦人科

1Dept. of Obstetrics and Gynecology, Keio University, School of Medicine, 2Division of Obstetrics and Gynecology, Kawasaki Municipal Hospital

キーワード :

【背景】
Speckle tracking法では超音波ビーム角度による制限を受けずに一心拍周期における両心室の動態解析が可能であり,胎児心機能評価への応用が期待される.しかしながら,同法による胎児心室動態解析報告例は散見される程度であり,特に壁運動の左右差に関する知見は少ない.
【目的】
本研究の目的は,speckle tracking法の解析ソフトのひとつであるsyngo Velocity Vector Imaging (VVI; Siemens Medical Solutions)を用いて,胎児心室の壁運動を検討することである.
【方法】
対象は形態異常を認めない正常発育胎児95例(妊娠19-36週)である.妊婦健診時のスクリーニング検査(超音波機器:ACUSON Antares [Mochida Siemens Medical Systems])において,胎児心臓四腔断面像(B-mode; frame rate: 60/sec)を記録し,syngo VVIを用いてofflineで心室壁運動を解析した.具体的には,心室の心内膜側をトレースし,VVI解析をもとに算出した長軸方向における心室全体(global)の壁運動速度(velocity),収縮期におけるストレインおよびストレインレート(strain およびstrain rate)と妊娠週数との相関を評価するとともに,各指標を左右心室間で比較検討した.さらに,心室自由壁心基部・中央部・心尖部における各指標を両心室間で比較検討した.
【結果】
(1)妊娠週数との相関:両心室の収縮期および拡張期global velocityは妊娠の進行に伴い有意に増加した(p<0.001).一方,両心室のstrain およびstrain rateは妊娠中期以降有意な変化を示さなかった.
(2)両心室の比較:拡張期global velocityは常に右室優位であった.一方,左室の収縮期global velocityは妊娠中期には右室優位であったが,徐々に左右差は少なくなり妊娠35 週頃には右室と同等であった.自由壁の各部位のvelocityは左室に比べ右室の方が高値を示した.また,心基部では右室のstrainおよびstrain rateは左室に比べ高値を示した.
【まとめ】
妊娠中期以降の正常胎児の心室壁運動速度は,拡張期は常に右室優位であるのに対し,収縮期は妊娠後期に両心室同等となることが示された.VVI解析で得られた心室壁運動の特徴は既報の解剖学的所見に一致しており,本法は胎児心機能評価の一助となるものと考えられた.