Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム6 <科学に活かす> 超音波の新技術・ソフトウェアを使いこなす

(S312)

Sono VCAD Labor

小林 浩一

Koichi KOBAYASHI

社会保険中央総合病院産婦人科

Department of Obstetrics and Gynecology, Social Insurance Chuo General Hospital

キーワード :

これまで,産婦人科医が行う超音波検査といえば,経腹超音波か経腟超音波であった.Sono VCAD Laborは,産科において,経会陰あるいは陰唇の間から3D超音波画像を得るものである.これにより恥骨の位置をメルクマールとして児頭の下降の様子や第三回旋の様子が観察できる.Sono VCAD Laborでは,得られた画像から,恥骨の方向と下端を決め,さらに児頭の位置をトレースすることにより,恥骨下端からおろした垂線に対する児頭先進部の下降度(progression distance:図A),恥骨と児頭先進部のなす角度)progression angle:図B),恥骨からおろした垂線と児頭の先進する方向との角度(head direction:図C),さらに直交断面画像からmidlineを描出して恥骨から仙骨への縦軸とのなす角度(midline angle)の4つのパラメーターを得ることができる.Progression distanceとprogression angleは児頭の下降度を,head directionは第三回旋の進行度を,midline angleは不正軸進入の有無を,客観的に観察できることから,主観的になりがちな内診所見を補完できると考えられている.これまでに,head directionが大きい,すなわち第三回旋が進んでいる症例においては吸引分娩が容易に行えるという報告がある.児頭が進行している方向がわかることで,急速遂娩において牽引する方向がイメージしやすいことも利点となると思われる.この方法によりfailed forcepsやfailed vacuumとなる症例を減少させることができるのではないかと期待される.さらに急速遂娩を決断したときの児頭の位置を写真として残すことで,判断根拠を客観的に残すことができるため,無用な紛争の回避に役立つ可能性もある.Sono VCAD Laborでは,得られた画像からトレースした児頭の位置の推移を経時的に示すこともできる.分娩の進行中に何回か画像を撮り,妊産婦や家族に見せることで児頭の下降が進行していく様子をイメージさせれば妊産婦をencourageすることができると考えられる.当院では2012年から妊産婦が陣痛室から分娩室に入室した時点で,原則的に全例助産師によりSono VCAD Laborの画像を撮っている.医師は,分娩立ち会いに際してこの画像を参照することができるため,さまざまな場面で有用性を感じている.一方で,Sono VCAD Laborには,煩雑さなど,まだ克服するべき問題点も少なくない.発表では,これまでのデータや症例なども紹介してSono VCAD Laborの有用性や問題点などについて議論したい.