Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 産婦人科
シンポジウム2 <教育に活かす> 産婦人科救急における知っておいて欲しい超音波所見

(S308)

産婦人科における深部静脈血栓症(DVT)の診断・管理について

Diagnosis and management of deep venous thrombosis (DVT) in Obstetrics & Gynecology

椎名 昌美1, 保田 知生2, 祖川 裕美5, 小谷 敦志3, 後藤 千鶴3, 平野 豊4, 山本 嘉一郎1

Masami SHIINA1, Chikao YASUDA2, Hiromi SOGAWA5, Atsushi KOTANI3, Chiduru GOTO3, Yutaka HIRANO4, Kaichiro YAMAMOTO1

1近畿大学医学部堺病院産婦人科, 2近畿大学医学部附属病院外科, 3近畿大学医学部附属病院臨床検査部, 4近畿大学医学部附属病院循環器内科, 5近畿大学医学部堺病院臨床検査部

1Department of Obstetrics & Gynecology, Sakai Hospital Kinki University Faculty of Medicine, 2Department of Surgery, Kinki University Faculty of Medicine, 3Department of Clinical Laboratory, Kinki University Faculty of Medicine, 4Department of Cardiology, Kinki University Faculty of Medicine, 5Department of Clinical Laboratory, Sakai Hospital Kinki University Faculty of Medicine

キーワード :

深部静脈血栓症(DVT)は肺血栓塞栓症(PTE)の原因として知られ,静脈血栓塞栓症(VTE)と称されている.女性に多いとも報告されており,産科,婦人科のいずれの領域においても注意が必要な合併症である.産婦人科におけるVTEの頻度は他科と比較しても高いことが知られており,肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症(静脈血栓塞栓症)予防ガイドラインが作成されて以降,各々の病院で血栓予防対策が取り入れられるようになった.血栓予防対策を行うに当たり,婦人科領域における術前の血栓症有無の評価として,D-dimer,下肢超音波検査等でスクリーニングを実施する場合が見られる.これらの検査においてVTEを検出し,その部位,形状,大きさを確認することはリスク管理において非常に重要である.また,産科領域においては,妊娠時は非妊時と比較してVTEを発症するリスクが高くなることが知られている.子宮増大による圧迫を起因とする静脈うっ滞と,妊娠自体が影響した凝固亢進状態による妊娠後期のDVT発症は容易に想像されるが,PTEに関しては妊娠初期の方が後期よりも多いと報告されている.これは悪阻による脱水,切迫流早産のための安静,止血剤投与等の関与による発症が考えられる.妊娠初期から重篤なVTEを発症する可能性があり,妊娠期間を通して発症リスクが継続すると考えると,術前検査時や周術期とは異なり,一定時期でのスクリーニングを行うことは困難である.通常,下肢超音波検査は検査室に依頼し,検査を行うこととなるが,救急搬送時,術後,分娩後等,時間によっては検査が行えない状況が発生する.下肢超音波検査は検査時間も長く費やすことから,産婦人科の臨床現場において,自己にて検査を実施することはかなり困難である.しかし,明らかな腫脹,発赤,疼痛等の下肢症状を認めた場合や緊急手術術前等,リスク評価や診断確定における画像検査の第一選択として,下肢超音波検査を行う方が好ましいケースが生じる.そこで,日常より身近な診断手段として超音波検査を行っている産婦人科医として,緊急時に対応すべく下肢超音波検査を習得することは意義のあるものと考える.今回,私たちが行っている婦人科術前スクリーニングの方法や産科下肢有症状症例でのスクリーニング結果とともに,下肢超音波検査方法及び所見について,現在までに経験した症例を中心に報告する.