Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ミート・ジ・エキスパーツ2 <治療に活かす> 消化管疾患診断における内視鏡と超音波の役割

(S304)

胃疾患における内視鏡ならではの診断

Special diagnosis of gastric diseases by endoscopy

渡 二郎, 三輪 洋人

Jiro WATARI, Hiroto MIWA

兵庫医科大学内科学上部消化管科

Division of Upper Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Hyogo College of Medicine

キーワード :

内視鏡医は,日々内視鏡を用いてさまざまな胃疾患の診断や治療を行っている.内視鏡ならではの診断として,まず重要な疾患は内視鏡治療の適応となる早期胃癌の診断である.進行胃癌の拾い上げは腹部超音波検査でも可能と思われるが,僅かな色調の変化や凹凸の所見からなる早期胃癌の拾い上げは不可能であろう.内視鏡検査で癌を疑う所見を見つけた時,それが癌か非癌かの鑑別を詳細に行う(質的診断).この診断にはnarrow band imaging(NBI,狭帯域内視鏡)が威力を発揮する.NBIでは内視鏡の観察光の分光特性が狭帯域特性へと変更されており415nmと540nmの波長が使用されているため血管網の視認性が向上している.その結果,NBIを併用して胃粘膜を拡大観察すると粘膜上皮下微小血管構築像と粘膜表面微細構造が詳細に観察できる.普段われわれが用いる拡大内視鏡の最大分解能は5.6μmとされ,NBI併用拡大観察によって微細な血管網の不整,表面模様の変化から質的診断が可能となる(図1).もはや,このNBIを用いると癌の診断には生検いらずである.しかし,胃癌の深達度診断にはNBIは威力を発揮できない.深達度診断が難しい場合には,超音波内視鏡診断(EUS)が有用である.しかし,潰瘍を伴う場合にはEUS診断は難しい.また,胃の内視鏡検査では,しばしば胃粘膜下腫瘍を認める.通常の内視鏡観察では,その質的診断は困難であるが,EUSを用いるとその内部構造や腫瘍の発生層が同定できる.さらに超音波内視鏡下穿刺生検法(EUS-FNA)を用いると腫瘍の組織診断ができる.胃には間葉系腫瘍(GIST)が多く,組織診断でGISTと診断されれば切除が必要となる.したがって,このEUS-FNAを用いた胃粘膜下腫瘍の質的診断も内視鏡ならではの診断法である(図2).胃疾患の診断には内視鏡検査は必須であるが,EUSを併用しなければ診断できないものがある.本セッションでは内視鏡ならではの診断とEUSの併用が必要な疾患について提示し,胃疾患における内視鏡診断の実情をご理解いただきたい.