Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
ミート・ジ・エキスパーツ2 <治療に活かす> 消化管疾患診断における内視鏡と超音波の役割

(S304)

下部消化管における内視鏡ならではの診断

Clinical diagnosis of lower gastrointestinal tract especially due to endoscope

井谷 智尚1, 内田 浩也2, 登尾 薫2, 佐藤 信浩2, 山野 愛美2, 森 悠香2, 村上 坤太郎1, 佐々木 綾香1, 三村 純1

Toshinao ITANI1, Hiroya UCHIDA2, Kaoru NOBORIO2, Nobuhiro SATO2, Megumi YAMANO2, Yuka MORI2, Shintarou MURAKAMI1, Ayaka SASAKI1, Jun MIMURA1

1西神戸医療センター消化器内科, 2西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Nishi-kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Nishi-kobe Medical Center

キーワード :

【はじめに】
当院は腹部超音波検査を年間約8800件,上部消化管内視鏡検査を約5000件,下部消化管内視鏡検査を約3500件実施している地域中核病院である.我々,消化器内科医は内視鏡検査を実施しているが,自身でも腹部超音波検査を実施しており,消化管疾患においても超音波検査はきわめて有用であることを十分に認識しているつもりである.そのような中で,下部消化管における内視鏡ならではの診断について検討した.
【現状分析】
下部消化管病変に対する超音波検査は,特に救急領域において大きな役割を果たしている.腸閉塞では閉塞の位置やその原因,障害の程度など,病状の把握にきわめて重要な情報を提供してくれる.大腸憩室炎や急性虫垂炎では,その診断のみならず,周囲臓器への炎症波及などの情報は造影CTを凌駕することもしばしばである.しかし,問題点として消化管ガスの影響を受けやすいこと,検査実施者の力量が問われることなどが上げられる.一方,内視鏡検査が優位な点として,①消化管内の様子を直接,詳細に把握できる:具体的な例としては,炎症性腸疾患において,その診断,感染性腸炎との鑑別,重症度分類などは内視鏡所見で述べられることがほとんどである.②病変部で生検や粘膜切除術ができる:最終診断としての病理学的なアプローチには内視鏡検査が必須である.③出血性病変では直接治療につながる:毛細血管拡張症や放射線性直腸炎,結腸憩室出血などでは出血部位を発見次第すぐに治療が可能である.④超音波検査と内視鏡の利点を兼ね備えた超音波内視鏡も実施可能である.などがあげられる.これらについて,実際の症例を提示する.
【考察】
内視鏡検査は,侵襲がやや大きいこと,病変部に近づくことが難しい場合があることなどの問題点を有しているが,下部消化管疾患の診断には重要な検査手技であることに間違いはない.超音波技術の進歩により下部消化管疾患においても腹部超音波検査から多くの情報を得ることができるようになった.内視鏡医はその情報を十分に活かして,内視鏡検査に臨む必要があると考える.また,内視鏡医は,内視鏡所見を超音波検査を行うものに十分にフィードバックしていくことが重要である.このような双方向の確認により,超音波検査のレベル向上が得られると考えられた.