長谷川 雄一, 浅野 幸宏

Yuichi HASEGAWA, Yukihiro ASANO

成田赤十字病院検査部生理検査課

Department of Clinical Functional Physiology, Narita Red Cross Hospital

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【はじめに】
消化管疾患における画像検査は，周知の通りエックス線検査や内視鏡検査が第一選択とされ，この両者の診断学が中心に進んできた．しかし近年，超音波診断装置の改良によって消化管の詳細な評価も可能となり，特に体外式超音波検査（以下US）は，非侵襲的で繰り返し施行が出来ること，エックス線診断や内視鏡診断などの内腔面（粘膜面）からの診断とは異なる断層面（貫壁性）の評価法であり，周囲臓器との関連など壁外の情報も容易に得られることなどから，その有用性が注目されている．これらを踏まえ，消化管病変に対するUSの診断実例を報告する．
【各種消化管疾患の診断率】
当院のUSによる各種消化管疾患別の診断率を別図に示す．その適応疾患は多岐にわたり消化管領域におけるUSの有用性を如実に示唆するものである．但し，疾患により診断能の差が大きく，正診率についてはすべての消化管疾患において必ずしも満足できるものではない．例えば，スクリーニング検査（無処置での実施）の場合，進行胃癌のUS診断能は高く有用な検査法と考えられたが，偽陰性例は噴門部に多く観察の際には注意が必要である．また早期胃癌の場合には，部位によっては存在診断さえ不良となる．一方，条件が良好である場合や精査目的での300ml飲水下USでは精度の高い深達度診断，詳細な周囲臓器との関係把握など質的診断意義は向上し，評価は一変する．以上より，USの特性と限界を理解し適応疾患を吟味することが，臨床的意義を含めた診断能（正診率）の向上に必要不可欠であると考える．
【まとめ】
当院における診断成績を報告した．早期癌において従来の検査法を凌駕する結果は得られなかったが，USの意義は①内視鏡やエックス線造影を行なう前に各種疾患のスクリーニングとして．②既存疾患の経過観察においては内視鏡の代用に．③すでに診断されている疾患においても貫壁性の高分解能の画像が得られる特長を活かせば深達度診断や壁外合併症評価が可能．などがあげられるが，いずれもこれらが認識されて幾久しい．未だ論議の的となる理由の一つとして，検者の技量に依存するところが大きいと考えるが，これらについては過去の学術集会でも報告させていただいた．さらなる正しい普及を推進していく為にも，このセッションに参加された臨床の先生方や本学会の消化管診断基準小委員会に期待するところは大きい．