Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2013 - Vol.40

Vol.40 No.Supplement

特別プログラム 消化器
パネルディスカッション27 <診療に活かす> 膵腫瘍の診断に最も有用な画像診断法は?:画像診断の現状とピットフォール

(S291)

膵腫瘍診断における体外式超音波検査の有用性

Usefulness of transabdominal ultrasonography for the diagnosis of pancreatic tumor

高倉 玲奈, 石田 伸子, 蘆田 玲子, 井岡 達也, 吉岡 二三, 上田 絵里, 福田 順子, 仲尾 美穂, 田中 幸子

Rena TAKAKURA, Nobuko ISHIDA, Reiko ASHIDA, Tatsuya IOKA, Fumi YOSHIOKA, Eri UEDA, Junko FUKUDA, Miho NAKAO, Sachiko TANAKA

大阪府立成人病センター検診部

Cancer Survey, Osaka Medical Ceneter for Cancer and CVD, Osaka, Japan

キーワード :

【はじめに】
体外式超音波検査(US)は膵腫瘍の画像診断の中で最も非侵襲的な検査である.一般検診におけるUSでは,消化管ガスの影響,被検者の体型,時間的制約などにより膵SOL検出率は高くない.一方,IPMNを含めた膵のう胞などの膵癌高危険群のスクリーニング,経過観察においては簡便で非侵襲的なUSはその長所,限界を理解し,描出範囲を広くする工夫をした上での積極的な活用が期待される.
【目的】
人間ドックあるいは膵癌高危険群の経過観察におけるUS検査での膵描出率,指摘所見,膵癌発見率,他画像との比較等により膵腫瘍画像診断におけるUSの有用性を明らかにし,位置づけについて検討する.
【対象と方法】
対象は,2010年4月から2012年3月当院の人間ドック受診の590例(男性376例,女性214例,平均64歳),および1998年から2008年まで,膵のう胞あるいは主膵管拡張を有する膵がん高危険群を登録し,膵精密USを主検査にして3-6ヶ月おきに経過観察.1036例の経過観察中に膵癌が発症した29例(内訳 通常型膵癌19例,膵管内乳頭粘液性癌(IPMC)10例).エコー検査は半座位,胃充満法による膵・胆道系に特化したUS(以下膵精密US)を施行,人間ドックについても通常のUS検査に加えて,膵精密USを施行する.膵の部位は頭部,鉤部,体部,体尾(移行)部,尾部の5領域に細分して描出率を検討.US検査を定期検査に組み入れた膵がん高危険群(膵のう胞,膵管拡張)の経過観察中の発見癌におけるUSでの診断率,所見について検討する.
【成績】
1,人間ドック590例中,描出不良は1部位367例(62.2%),2部位65例(11.0%),3部位以上10例(1.7%).膵限局性病変の指摘は(疑い病変含む)116例(19.7%)で,その内訳は膵のう胞79例,低エコー腫瘤20例,高エコー腫瘤または石灰化17例.膵管拡張の指摘は軽度拡張含めて97例(16.4%)であった.また著変なしは384例(65.1%)であった.2,1036名の経過観察から通常型膵癌19例,膵管内乳頭粘液性癌(IPMC)10例が発症し,診断契機は定期エコー検査22例(内3例は血液検査異常あり),血液検査3例,MR/MRCP検査2例,自覚症状2例.22例中低エコー腫瘤の指摘は13例(径6-24mm),部位は頭部/鉤部5例,体部8例であった.その他のエコー指摘所見は,のう胞壁在結節または膵管内結節5例,膵管拡張3例,のう胞増大1例であった.3,stage0・1期は13/29例(45%)で,エコー検査が診断契機となった症例は12/13例(92%)と,特に早期stageでの発見においてエコー検査は有用であった.4,低エコー腫瘤のうち15mm以下で検出した9例の他画像での描出率はCT1/9,MR4/6,EUS7/8であった.5,エコー検査以外が診断契機となった7例の部位は鉤部3例,体部2例,体尾部・尾部2例で,鉤部の3例は膵のう胞に隣接した部位に発生した腫瘤であった.
【結語】
体外式超音波検査による膵の観察は胃充満法,体位変換を用いることで描出率が高くなり,スクリーニング検査に有用である.超音波検査での早期stageの発見率は高いが,鉤部などの描出不良部位については他検査との組み合わせをすることで,膵がん高危険群の経過観察についても積極的な導入が可能であると考える.